【10月10日 AFP】今年1月にドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が米議会で行った一般教書演説に招かれたチ・ソンホ(Ji Seong-ho)氏らの脱北者が9日、米首都ワシントンで記者会見し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長となんらかの宣言について交渉する際は人権問題解決を要求するようトランプ氏に呼び掛けた。

 米国を拠点とする非政府組織(NGO)「北朝鮮人権委員会(HRNK)」がナショナル・プレスクラブ(National Press Club)で開いた記者会見で、チ氏は「終戦宣言だけでなく、虐待を中止する宣言も出すべきだと思う」「なぜ同時に人権問題について協議することができないのか? 向こうの望みは分かっている。こちらの望みも要求していこう」と訴えた。

 マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は9日、自身4度目となった今月7日の平壌訪問で「北朝鮮の完全かつ最終的な検証された非核化」という目標に向けて「実質的な進展」があったと記者団に語った。トランプ氏は、休戦協定によって停戦中の朝鮮戦争(1950~53年)を正式に終結させる終戦宣言を出す用意があるとほのめかしている。

 チ氏は、1990年代の大飢饉(ききん)の際、食べ物と交換するために石炭を盗もうとした際に列車から転落。麻酔無しで左腕と左脚を切断することになった。韓国に逃れた後、義肢を手に入れた。

 フランス人記者のピエール・リグロ(Pierre Rigoulot)氏との共著「平壌の水槽(The Aquariums of Pyongyang)」で知られる脱北者の姜哲煥(カン・チョルファン、Kang Chol Hwan)氏は、北朝鮮に融和的な韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領について、金正恩政権に命綱を差し伸べていると批判した。

 姜氏は、「北朝鮮経済は破綻寸前なので、米国と韓国がいくつかの条件を決めたら北朝鮮側に選択の余地はあまりないだろう」との見方を示した上で「しかし現実には逆に北朝鮮の方が条件を決めている。米韓は北朝鮮の指導者とその政権にだまされているように見える」と述べた。

 国連(UN)の北朝鮮人権調査委員会が2014年に公表した画期的な報告書で、北朝鮮は4つの大規模収容所に政治犯8万~12万人を収容し、被収容者は管理の一環として極度の飢餓状態に置かれていると指摘されていた。

 米国は定期報告で北朝鮮の人権問題に懸念を示しているものの、トランプ政権は北朝鮮との交渉では核兵器とミサイルについてのみ協議し、それ以外の問題は扱っていないとしている。

 姜氏は、「トランプさん、金正恩と会うときは必ず人権について話し合ってください。人権は基本的な問題なのですから」「もし終戦宣言という贈り物を渡すつもりなら、交換条件として金正恩に北朝鮮国内にあるすべての強制収容所の解体を要求してください。それがフェアというものです」と訴えた。(c)AFP