【10月9日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は9日、2016年の米大統領選をめぐり、ドナルド・トランプ(Donald Trump)陣営の選対幹部がライバル候補に対するインターネット上での妨害工作の提案をイスラエル企業に依頼していたと報じた。

 依頼したのは、トランプ陣営の選対本部副部長を務め、資金洗浄(マネーロンダリング)などで起訴されたリック・ゲイツ(Rick Gates)被告。共和党予備選の決選投票と民主党のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官と争った大統領選本選に関して、イスラエルの情報企業、サイグループ(Psy-Group)に助力を仰いだという。

 大統領指名投票が行われた2016年の共和党大会(Republican National Convention)の前には、インターネット上の偽アカウントを使って当時、トランプ氏の最大のライバルだったテッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員を攻撃し、代議員の投票に揺さぶりをかける方策を提案するよう同社に依頼した。

 また、本選で対決したクリントン氏に対する「補完的な情報活動」も要請。さらにサイグループは3つ目の提案として、ソーシャルメディアを使って対立候補同士の分裂を深める計画を提示したとされる。サイグループはイスラエルの元情報局員らが所属する企業だという。

 ただ、トランプ陣営が同社の提案に従い、ソーシャルメディアによる操作や情報収集を実行したかどうかについては証拠がないとニューヨーク・タイムズは報じている。

 同紙は複数のインタビューやサイグループの提案書の写しを引用し、ゲイツ被告の動きは、米大統領選への介入を当時エスカレートさせていたロシアとは無関係だったようだとも伝えている。

 同紙によると、ロシアとトランプ陣営の共謀疑惑を捜査するロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官のチームはサイグループによるトランプ陣営への提案書の写しを入手し、同社に事情聴取を行ったが、この提案が選挙への外国の介入を取り締まる米国法に違反するかどうかは定かでないという。

 資金洗浄や脱税の罪で起訴されたゲイツ被告は今年2月に司法取引に応じ、モラー氏の捜査に協力することを約束した。トランプ氏側はロシアとの共謀疑惑を繰り返し否定している。(c)AFP