【10月6日 AFP】コンゴ民主共和国政府は5日、2018年のノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞することが決まった同国のデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)医師(63)について、性的暴行で心身に傷を負った女性を助けるという「非常に重要な仕事」をしていると称賛する一方で、人道活動と政治を混同していると非難した。

 ムクウェゲ医師が国内東部にある自身の病院で手術に当たっていた最中にノーベル平和賞受賞が発表された。ニュースを知った同僚や支援者らから大歓声を浴び、その後、喜びのハグを受けた。「私が手術室にいると周囲が騒がしくなり、何が起きたのか特に気に留めていなかったが、突然、何人かが入ってきて知らせてくれた」と、ムクウェゲ医師はノルウェーの日刊紙ベルデンスガング(VG)に語った。

「ドクター・ミラクル(Doctor Miracle)」とも呼ばれ、レイプは「大量破壊兵器」だと言うムクウェゲ医師は、ノーベル平和賞を紛争や暴力で傷つけられてきた世界中の女性にささげると述べた。

 一方、コンゴ民主共和国政府のランバール・メンドゥ(Lambert Mende)報道官はAFPに対し、「政府はデニ・ムクウェゲ医師が非常に重要な仕事をしていることを称賛する。われわれとは意見が一致しないことも多いが」と述べ、「意見の不一致は、彼が自身の仕事を政治問題にしようとするたびに起きてきた。とはいえ、人道的観点からは重要な仕事であることは間違いない」と続けた。

 ムクウェゲ医師はこれまでにもコンゴ民主共和国で性暴力が増加している状況を繰り返し批判し、ジョゼフ・カビラ(Joseph Kabila)大統領をやり玉に挙げてきた。

 カビラ大統領の2期目の任期は法的には2年前に終わっているはずだが、大統領選を2回延期した揚げ句、今年12月にやっと退陣することが決まっている。そんなカビラ大統領をムクウェゲ医師は、「私たちは、国民を愛さない人々に統治されている」と批判したこともある。

■ムクウェゲ医師、政権との「平和的な闘い」呼び掛け

 ムクウェゲ医師は今年7月、カビラ政権と「平和的に闘う」よう国民に呼び掛け、12月23日に行われる大統領選では不正が行われるだろうと主張した。翌8月にカビラ大統領は、17年間務めてきた大統領職から離れる意向を示し、後継者を指名した。

 メンドゥ報道官は、「ムクウェゲ医師は、カビラ大統領が3期目を望んでいると考えていたが、それは間違いだ」として、「ムクウェゲ医師が常に正しいというわけではない」と述べた。「われわれは、ノーベル賞(委員会)によって功績が認められたのは…ふさわしいことだと考えているが、人道活動と政治を混同しようとする人には、それが誰であれ、今後も異議を唱えていく」とくぎを刺した。(c)AFP