【10月5日 AFP】化石燃料に代わるエネルギー源として期待のかかる風力発電だが、大気中に熱や水蒸気を再分配するために気候変動の原因となっているとする研究論文が4日、学術誌「ジュール(Joule)」で発表された。

 米ハーバード大学(Harvard University)の研究チームによると、米国全体の電力を風力発電で賄った場合、風力発電所を設置した地域の地表温度は0.54度、米本土全体の地表温度は0.24度上昇するという。

 この論文の執筆者の一人、ハーバード大のデービッド・キース(David Keith)教授(工学、公共政策)は、「風力はあらゆる環境的尺度で石炭より優れているが、その環境への影響を無視できるわけではない」と指摘した。

 19世紀末以降、地球の平均気温は約1度上昇しているが、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」は、環境への重大な影響を回避するため、平均気温の上昇を1.5~2度に抑えることを各国に求めている。

 風力発電が気候変動に与える影響はこれまでにも研究されてきた。米科学誌サイエンス(Science)に最近発表された研究によると、サハラ砂漠(Sahara Desert)の一画に風力発電用のタービンを集中的に設置した場合、周辺の気温や降雨量、ひいては植生にまで影響を及ぼすという。

 ハーバード大の研究チームによると、同等のエネルギー生成率で比較した場合、風力発電による環境負荷は太陽光発電の約10倍に上るという。

 キース氏は、「風力発電の恩恵はゆっくりと積み重なっていくが、風力発電が気候に与える直接的な影響はすぐに現れる」と説明し、「向こう10年という視点で見れば、風力がもたらす気候への影響は実は石炭やガスよりもいくつかの点で大きい。向こう1000年という視点で見れば、風力は石炭やガスよりもはるかにクリーンだ」と指摘している。(c)AFP