【10月2日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)に参戦するメルセデスAMG(Mercedes AMG)のトト・ヴォルフ(Toto Wolff)代表は、先月30日に行われた第16戦ロシアGP(Russian Grand Prix 2018)決勝において、ルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)を勝たせるために「チームオーダー」を出して物議を醸したことについて、自身に責任があると強調した。

 オーストリア出身のヴォルフ代表は、ハミルトンに最初のピットインの指示を出すべきタイミングで、戦略担当責任者のジェームス・ボウルズ(James Vowles)氏と自身が会話をしてしまったことで、結果的に同選手のピットインが1周遅れてしまったと明かした。

 これで一時的に順位が後退したハミルトンは、タイトルを争うフェラーリ(Ferrari)のセバスチャン・ベッテル(Sebastian Vettel)を必死で追い抜いたが、タイヤにブリスター(火ぶくれ)ができてしまった。その状況からメルセデスは、ベッテルから追撃を受けるハミルトンを守るため、先頭を走っていたバルテリ・ボッタス(Valtteri Bottas)に対して順位を譲るようにチームオーダーを出さなければならなくなった。

 ヴォルフ代表は、「時には誰かが悪者になる必要があり、今回は私だということだ」とすると、「てんびんに掛けなくてはいけないときもある。今回だったら、多くの正当な理由に基づいて日曜日(30日)の夜のレースについて自分が悪者になるか、それともシーズン最後のアブダビGP(Abu Dhabi Grand Prix 2018)で愚か者になりたいと思うかだ」「シーズン最後に愚か者になるくらいなら、きょう悪者になる方を選ぶ」と述べた。

 ハミルトンと順位を交換したことによって、ボッタスは昨季にキャリア初優勝を飾ったソチ・オートドローム(Sochi Autodrom)で手にするはずだった勝利をふいにした。レース後にはボッタスが不満気な顔を見せていたのに対し、ハミルトンは自分が勝ったことに気まずそうな表情を浮かべていた。

「予期していたことや話し合っていたこととは、まったく違う結果になってしまった」と話したヴォルフ代表は、「われわれは時間をかけてあらゆるシナリオを話し合っていたし、オーバーテークの応酬になるのは想定内だった」「ところが、ピットストップのタイミングで物事が複雑になってしまった。バルテリを最初にピットインさせたのは、彼のポジションを守る上で正しかった。しかし、ルイスは1周遅かった」と振り返った。

「ピットインのタイミングについては、私に責任がある。ジェームスが指示を出すべきタイミングで、私が彼と話してしまっていたからだ。1周遅すぎた結果、(ハミルトンの)順位が後退してしまった」「ルイスはセバスチャンを抜くために、必死に追い上げなければならなかった。素晴らしいパフォーマンスだったが、タイヤにブリスターができてしまった。バルテリは先頭でタイヤに問題はなく、ルイスはその後ろでリヤタイヤにブリスターを抱えていた。そうした状況の中で、セバスチャンがルイスに襲い掛かってきた…」

 ハミルトンはレース後、望んでいた勝ち方ではなかったと話すと、これまで経験した中で最も複雑な気持ちだったと付け加えた。(c)AFP/Tim Collings