■負債、そして「デジタルシルクロード」への懸念

 中国の習主席は今月、中国と一帯一路に参加する国との貿易額は5兆ドル(約560兆円)を超え、直接投資額は600億ドル(約6兆8000億円)を突破したと発表した。

 しかし中国のひも付き援助について、利益よりも負担の方が大きいのではないかと疑問に思い始めている国もある。

 極めて重要な財源問題も含め、EUの構想はまだ多くの部分が煮詰まっていないものの、計画では「高い環境・社会的基準」と「インフラ計画の財政・金融における持続性」の重要性が強調されている。この考えは、中国の大盤振る舞いが実質的に借金地獄を生み出しているという、一帯一路構想に対する大きな批判を強く意識したものとみられる。

 スリランカでは昨年、14億ドル(約1500億円)規模の事業向けに中国から借り入れた融資への返済の見通しが立たなくなり、戦略上重要な港の運営権を中国に99年間貸し出すことで両国が合意した。

 一帯一路への懸念が高まり、今年8月にマレーシアは200億ドル(約2兆2000億円)規模の高速鉄道計画を含む中国関連3事業を中止。つい最近まで中国マネー受け入れに熱心だったパキスタンでも、中国事業に関する債務返済能力への懸念が広がり、パキスタン政府は融資の透明性を高めると宣言した。

 米シンクタンク、カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)のフィリップ・ルコー(Philippe Le Corre)氏は、サイバーセキュリティー問題がますます各国政府の重要な懸念事項となる中、中国の「デジタルシルクロード」に巻き込まれるより、EUが推進する透明性のほうが魅力的であることが証明されるかもしれないと指摘する。

 ルコー氏は「基本的にデジタルシルクロードは中国の通信企業に国内のインフラ建設を認めるもので、ポータルサイトや電子商取引サイトなど、あらゆるデジタル媒体へのアクセス権を与えるもの」と説明。「非常に長い期間にわたって中国の足跡が残ることになり、(そうなった時には)他の選択肢は残っていない」と警鐘を鳴らした。

 気付き始めている国もある、と前置きした上でルコー氏は「特に情報やテクノロジーの管理に関しては、持っている卵を全部同じバスケットに入れるようなことは良くない、中華帝国への依存は大きなリスクを伴う」と強調した。(c)AFP/Damon WAKE