【9月27日 AFP】フランスで、ほぼ無名のラッパーが「白人をつるせ」と歌う曲を作り、白人男性を拷問して銃で撃ち、最後には木につるすシーンを含むミュージックビデオ(MV)を公開して、国内に怒りが広がっている。

 カメルーン系のニック・コンラッド(Nick Conrad)によるこのビデオは、コメディアンで、過去に反ユダヤ的で言動で有罪判決を受けているディユドネ・ムバラ・ムバラ(Dieudonne M'bala M'bala)が自身のフェイスブック(Facebook)上にリンクを貼ったことで拡散し、ユーチューブ(YouTube)上で数千回再生された。26日には削除されている。

 白人をつるせという意味のフランス語「pendez les blancs」の頭文字をとって「PLB」というタイトルのこの曲のMVには、コンラッド本人とその仲間が歩道で白人男性を引きずり、頭を蹴る様子が映っている。これは、米国のネオナチ(Neo-Nazi)による黒人虐待問題を描いた映画『アメリカン・ヒストリーX(American History X)』のワンシーンを意図的に模したものとみられている。

 コンラッドはこの曲の中で、「託児所に行き、白い赤ん坊らを殺す。すぐに捕まえてやる、そして親の首をつるすんだ」と歌っている。

 バンジャマン・グリボー(Benjamin Griveaux)政府報道官は「悪意に満ちたおぞましい歌詞」を「これ以上ない最も強い言葉で」非難すると表明。ジェラール・コロン(Gerard Collomb)内相も、このビデオの「卑劣な発言と不名誉極まりない攻撃」を猛批判した。

 パリ検察当局が調査に乗り出しており、コンラッドは同国の厳格なヘイトスピーチ(憎悪表現)規制法の下、憎悪扇動容疑に問われる可能性がある。

 反人種差別・反ユダヤ差別国際連盟(LICRA)は警察に正式な申し立てを行い、コンラッドの芸術活動の自由は「肌の色を理由に、白人をつるすよう呼び掛ける自由」を許容するものではないと糾弾している。(c)AFP