【9月26日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中に欧州戦線に従軍した米軍兵士だった父親を半生を費して捜してきたフランス人男性が24日、DNA鑑定による発見のおかげで、存在さえ知らなかった異母弟との対面を果たした。

 今は引退生活を送っている仏東部ロレーヌ(Lorraine)地方の元郵便局員、アンドレ・ガントワ(Andre Gantois)さん(72)は15歳の時、臨終間際の母親に米国人の父親の存在を明かされた。しかし、名前などの詳細は一切聞かされなかった。唯一残された手掛かりは、母親が終戦後まもなく妊娠したということだけだった。

 20歳の時に父親捜しを始めたガントワさんが、パリの在仏米大使館を訪れると「見つかる見込みはほとんどない」と言われたという。

 ガントワさんはめげずに米軍や法律関係の書類について調べ続けた。発見につながったのは義理の姉妹に、DNA鑑定を使う米国の家系調査会社マイヘリテージ(MyHeritage)を勧められたことだった。

 ガントワさんは当時の心境について、「まったく期待していなかった。自分の父親さえ知ることなく死んでいくものと決めつけていた」と語った。だが、口内から採取した標本を送ると、マイヘリテージからDNA型の一致があったとの通知を受けた。そして、米サウスカロライナ州在住のアレン・ヘンダーソン(Allen Henderson)さん(65)から連絡があった。

 ヘンダーソンさんも数週間前、「米FOXニュース(Fox News)でマイヘリテージの家系調査サービスのCMを見て、自分の出自について調べようと思い立った」という。ヘンダーソンさんは、ガントワさんの7歳年下の異母弟だった。

 父親は1997年に亡くなっていた。ガントワさんの母親のイレーネさんは妊娠したことを告げていなかったため、父親はフランスに息子がいることを知らぬまま亡くなったとみられる。だが、異母弟が見つかったことで、ガントワさんのショックは幾分和らいだ。

 さらに、ヘンダーソンさんには姉のジュディ・ロジャース(Judy Rogers)さん(70)がいるので、ガントワさんには異母妹もいたことが分かった。

 8月末、ヘンダーソンさんは地元のニュース局7 Newsに対し、「兄はもちろん私たちの存在を知らなかったし、私だって兄がいるなんて思ってもいなかったので、彼を捜していたわけではなかった」と語った。

 あらかじめメールで写真を交換していた兄弟は24日に対面した。場所は、1944年6月に父親がナチス・ドイツ(Nazi)に占領されたフランスを解放するため、連合国軍の大勢の兵士と共に上陸した仏北部の風吹きすさぶ海岸だった。

 この兄弟は外見がそっくりなだけでなく、黒猫を1匹飼っている点や、格子縞のシャツが好きな点も共通していた。

 ガントワさんはAFP記者に「周りの人には、私たちは信じられないほどよく似ていると言われる。あなたも見たら、兄弟だねと言うだろう」と語った。さらにガントワさんはヘンダーソンさんが持ってきた写真を見て、「父も私とそっくりだ。笑顔も、何もかもが」と語った。

 仏歴史学者のエマニュエル・ティエボ(Emmanuel Thiebot)氏がAFPに語ったところによると、フランスで米兵と現地女性の間に生まれた子どもの数は不明だという。一方、公式統計によると、ドイツで生まれた米兵と現地女性の子どもの数は20万人に上るとみられている。(c)AFP/Laurent GESLIN