【9月23日 AFP】バチカン(ローマ法王庁)が司教の任命をめぐって中国と歴史的合意に達し、中国政府が教会への管理強化を進めようとしていると懸念される一方、香港や台湾の教会での礼拝に出席したカトリック教徒らは23日、おおむね前向きな反応を示した。

 率直な物言いで知られ、かつて香港で司教職を務めたジョセフ・ゼン(Joseph Zen)枢機卿は合意の発表に先立ち、「裏切り」としてバチカン当局者らを非難。

 さらに発表後に投稿したブログでも、ゼン枢機卿はこの合意が及ぼす影響への懸念を示し、「中国政府は同国のカトリック教徒に何と言うだろうか? 『われわれに従え、ローマ法王庁は既にわが国と合意を結んでいるぞ』だろうか?」と投稿した。

 ソーシャルメディアには、バチカンが中国で起きている「静かな文化大革命」に目をつぶっていると批判するコメントも複数あった。中国ではここ数か月、教会が相次いで破壊され、聖書の販売も取り締まられているとされている。

 だが香港の教会に通うカトリック教徒らは、慎重ながらも合意を歓迎した。

 香港のカトリック教会、聖母無原罪主教座堂(Cathedral of the Immaculate Conception)の教会員であるテレサ(Teresa)さんは、「接触が増えるのは良いこと」と述べた。テレサさんは、中国政府とバチカンの関係が温まることで、香港のカトリック教会への干渉につながる心配はないと考えている。

 同じく教会員のニッキさんは、「両者の協力は、それが対等な協力である限り、良いことに違いない」と述べた。

 その一方、台湾ではこの合意により、欧州で唯一外交関係があるバチカンを失うことになるのではないかとの懸念の声が上がっている。バチカンは中国ではなく台湾と外交関係を結ぶ17か国の一つ。

 台湾紙の自由時報(Liberty Times)のフェイスブック(Facebook)上では、「悪魔と取引した」などとバチカンを非難するコメントが寄せられた。

 だが教会に通うカトリック教徒らは落ち着きを保っている。

 台北のカトリック教会、淡水天主堂(Our Lady of Fatima)の教会員であるユアン(Yuan)さんは、「この合意を結ぶ際に法王が考慮したのは、中国と外交関係を結ぶということより、信教の自由を促進するということだと思う。だから法王を政治化させる必要はない」と語った。(c)AFP/Elaine Yu with Amber Wang in Taipei