【9月22日 AFP】世界保健機関(WHO)は21日、飲酒が原因で年間300万人が死亡しており、その数はエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)や暴力、 交通事故による死者数の合計を上回るとする報告書を発表した。このうち4分の3以上が男性だという。

 WHOが発表した500ページ近い報告書によると、飲酒運転、飲酒によって引き起こされた暴力や虐待、さまざまな疾患といったアルコールが原因で死亡する人は世界の全死亡者の5%を超えている。

 最新の統計によると、2016年に世界で死亡した人のうち約300万人が飲酒関連の死因で亡くなっていた。この年の世界の全死亡者に占める死因別の割合は飲酒関連が約5.3%、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびエイズが1.8%、交通事故が2.5%、暴力が0.8%だった。

 一方でWHOは、世界的には「好ましい傾向」もみられると指摘。2010年以降、大量機会飲酒(heavy episodic drinking、WHOの定義によると純アルコール換算で60グラム以上の飲酒を30日に1回以上すること)や飲酒に起因する死亡事例は減少傾向にあるとしている。

 WHOによれば、世界的にはアルコール使用障害(alcohol use disorders)の推計患者数は男性2億3700万人、女性4600万人に上る。

 アルコール消費量は、世界的に偏りがみられ、世界人口のうち15歳を越える人の過半数はアルコールを一切摂取していない。1人当たりの飲酒量が最も多いのは欧州で、2010年以降10%以上減ったものの、純アルコール換算で年間約10リットルとなっている。

 しかしWHO欧州地域事務所管轄の国のうち4分の3で飲酒量は減少しており、最も減少幅が大きかったのはロシア、モルドバ、ベラルーシだった。ロシアの15歳を越える人の年間平均飲酒量(純アルコール換算)は、2005年は18.7リットルだったのに対し2016年には11.7リットルだった。

 WHOの薬物乱用対策部門のウラジーミル・ポズニアック(Vladimir Poznyak)氏は報道陣に対し、ロシアの飲酒量の「劇的な減少」は、ロシア政府が打ち出したウオッカの最低小売価格の引き上げやアルコール広告の禁止といった「積極的な政策」の成果だと指摘した。

 しかしWHOは、欧州以外でのアルコール消費量は増え続けており、特に顕著な伸びをみせている中国とインドを抱えるアジアでその傾向が強いと指摘し、世界のアルコール消費量を2010年から2025年までの間に10%削減する目標に向けてさらなる対策を取るよう各国に求めている。(c)AFP/Nina LARSON