【9月20日 AFP】密輸象牙のDNAを調べ、アフリカの大規模な象牙カルテルを3件特定したとする研究報告書が19日、発表された。このDNAデータは、捜査当局が最も凶悪な密輸業者の一部を刑事訴追する助けになるという。

 毎年約4万頭のアフリカゾウが象牙目的で殺されており、その象牙はアフリカからアジアやその他地域に広がる数十億ドル(数千億円)規模の密輸産業の一部として違法に取引されている。

 密輸業者らは輸送用コンテナ内に象牙を隠すが、毎年世界中に送られるコンテナ約10億台のうち、検査官らが内部を詳細に調べるのは全体の1%にすぎない。

 米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に掲載された報告書によると、実地検査が行き届かない状況では、遺伝子検査が助けになるという。

 論文の筆頭執筆者で、米ワシントン大学(University of Washington)のサミュエル・ワッサー(Samuel Wasser)教授(生物学)によると、「重要な突破口」が開けたのは、密輸象牙の約半数がペアになっていないことに専門家らが気付いた時だという。2本のうちの片方が失われていることが多かったのだ。

 そこで研究チームは、象牙の出所を明らかにするために、2006年~2015年に押収された象牙38本に対してDNA検査を実施した。

 その結果、38本のうち26本は、別の時に押収された象牙とそのDNA型が一致することが分かった。

 さらに、2本一組の象牙を別々に密輸した二つの積み荷は、通常10か月以内の間隔で同じ港を通過するケースが多いことを、研究チームは発見した。

 電話会議形式で取材に応じたワッサー教授は、記者団に「二つの積み荷の両方に同じ大規模密輸カルテルが関与していたことを、この結果は示唆している」と語った。

「今回の研究では、アフリカから象牙を出荷している大規模密輸カルテルとみられる3件の特定に成功した」

 ワッサー教授によると、3件のカルテルはそれぞれケニアのモンバサ(Mombasa)、ウガンダのエンテベ(Entebbe)、トーゴのロメ(Lome)を拠点として活動しているという。

 象牙密輸業者は通常、それぞれの押収案件に対して訴追されるため、個々の密輸業者を複数の大規模な押収案件として関連付けることができれば、密輸業者が負うリスクを増大させ、また国をまたぐ複数の重大な犯罪行為で密輸業者を告発し、より重い刑罰を科すことが可能になる。

 ワッサー教授によると、このチームの研究によって、特定の犯罪者とより多くの象牙とを結びつけることに成功しているという。