【9月17日 AFP】オーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は16日、醜聞の絶えない高齢者介護施設を対象とした全国的な調査を開始すると発表した。

 オーストラリアでは、高齢者介護施設での虐待やネグレクト、管理運営ミスなどの報告が多数寄せられている。1年前には、南部にある国立の認知症高齢者介護施設で、それまで10年にわたり入所者が劣悪な処遇を受けていたことが調査によって判明し、この施設は閉鎖に追い込まれた。

 モリソン首相の発表によると、その問題の発覚以降、保健省は毎月ほぼ1か所のペースで介護施設を閉鎖している。また基準を満たせない施設も増加の一途をたどっているという。

 首相は「こういった事例がどこまで拡大しているのかを把握しなければならない…高齢者介護サービスの質と安全性という観点からの懸念領域が依然、厳存している」と指摘した。

 関連団体は営利・非営利を問わず調査対象とされる予定で、さらに高齢者に限らず、福祉施設に入所している障害者へのケアについても調査するとしている。

 シドニーを中心に発行されている日曜紙サンデー・テレグラフ(Sunday Telegraph)が入手した国の統計によると、入所者への「深刻なリスク」が認められた高齢者介護施設の数は、2017~18年度に177%増。また政府の規定からの逸脱が顕著だった施設の数は、292%増だった。

 オーストラリアでは戦後のいわゆる「ベビーブーム」世代の高齢化に伴い、介護施設への入所希望者が急増するとみられている。

 これまでに明らかになった介護施設の深刻な問題事例には、70歳の入所者が別の入所者に襲われて死亡した事件や、身体拘束具の使用、薬物の過剰投与、男性職員による99歳の女性へのわいせつ行為などがある。

 また今月にも、シドニーの介護職員が、高齢男性のシャツを引っ張り、靴で繰り返し殴打した容疑で訴追されている。(c)AFP