【9月13日 AFP】シリア反体制派の最後の拠点に対する攻撃の懸念が強まる中、ある父親が紙コップとポリ袋でガスマスクを作り、子どもたちの命を守ろうと必死になっている──。

 イドリブ(Idlib)県北西部で暮らす警察官のホザイファ・シャハドさん(27)は、化学兵器の使用に備え、できる限りの準備を進めている。自宅地下には、空爆に耐えうる防空壕(ごう)まで掘った。手作りのマスクを手に持ち、「ユーチューブ(YouTube)で作り方を学んだ」とAFPの取材に語り、あとは危険な毒ガスから、子どもたちを守ってくれることを願うばかりだとした。

 シャハドさんはマスクの作り方を見せてくれた。まずは紙コップの底にいくつもピンで穴を開け、次に医療用ガーゼを底に押し込み、スプーン数杯分の炭と脱脂綿を入れて再びガーゼを重ねた。こうすることで炭を誤って吸い込まずに済むのだという。それを粘着テープで固定し、コップ上部に切り込みを少し入れて鼻のスペースを確保した。

 できたコップのフィルターを巻き毛で緑色の目をした小さな子どもの顔に当て、「さあ、息を吸って」とその装着具合を確かめた。

 角を少し切り落した大きな透明のポリ袋にコップのフィルターを取り付けてマスクは完成。シャハドさんは3歳の息子にマスクを手渡し、小さな手がそれをつかむと、ポリ袋が頭部と肩全体をすっぽりと覆った。

 地域の人々は、ここしばらくの間に、イドリブ県の周囲にロシアが支援する政府軍が集結していることに神経をとがらせている。反体制派の最後の拠点に、政府軍が総攻撃を仕掛ける機会をうかがっているとされており、シャハドさんも「化学兵器を使い、政権側とロシアがここを攻撃するとの話が漏れ伝わってきている」と不安げに語った。

 35万人以上が犠牲となった7年におよぶ内戦の間、反体制派の支配地域に対して化学兵器を使用したとして、政府軍は幾度となく非難されてきた。大半は塩素ガスだが、致死性のサリンガスの使用も報告されている。

 シリア政権とロシアは、こうした疑惑を一貫して否定し続けており、化学兵器の使用は反体制派によるものだと主張している。しかし国際調査機関は、政権側が一般市民に対して化学兵器を少なくとも3回使用したとしている他、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によってマスタードガスが使われたことも報告している。(c)AFP/Omar Haj Kadour