【9月13日 AFP】ハッシュタグ「#」はインターネット時代を象徴する記号かもしれないが、古代の「#」が無造作に描かれた小石片を南アフリカで見つけたとの研究論文が、このほど発表された。これは世界最古の「画材」を用いた描画だと、研究チームは考えているという。

 考古学者らによると、約7万3000年前に描かれたとされるこの模様は、アフリカ、欧州、東南アジアなどでこれまで発見されていた抽象図より3万年以上古いという。

 研究チームは南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)の約300キロ東に位置するブロンボス洞窟(Blombos Cave)内でこの石を発見した。この洞窟遺跡には、現代人が文化と呼ぶものの最古の実例の一部を示す痕跡が残されている。

 ブロンボス洞窟で行われた過去の発掘調査では、貝殻製のビーズや削られた跡のある黄土片、原始的なセメントに似た物質から作られた道具類などが見つかっている。

 今回発見された遺物の一つ、ケイ酸塩岩の小片の表面には、縦6本横3本の線が交差する模様が赤褐色で意図的に描かれていた。

「この模様に対して今回実施した顕微鏡分析と化学分析の結果、棒状にした黄土を用いて赤褐色の色素を石片に意図的に塗布したことが確認された」と、研究チームは12日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文に記している。

 石片の表面にみられる「#」の模様は、当初はより広範囲に及んでいたと考えられ、「全体としてはさらに複雑」だった可能性があると、研究チームは説明している。

 これまでに見つかっている「彫り刻まれた跡」には、インドネシア・ジャワ(Java)島の50万年以上前のものも含め、さらに古い時代のものが存在している。しかし、顔料で描かれたものとしては、ブロンボス洞窟の「#」模様が最古だと研究チームは述べている。

 仏ボルドー大学(University of Bordeaux)国立科学研究センター(CNRS)のフランチェスコ・ディエリコ(Francesco d'Errico)所長は、AFPの取材に「描画というものが狩猟採集民の頭の中に存在していたとする説を、今回の結果は裏受けている」と語った。

 ただ、南アで発掘されたものなどの絵に「象徴的な意味」があることは疑いの余地がない一方で、初期人類が「それらを芸術とはみなしていなかった可能性が高い」と、ディエリコ所長は指摘している。(c)AFP