【9月16日 AFP】フランス人にとって、マクドナルド(McDonald’s)といえば長年、悪口を言いたくなるブランドだった。

 マクドナルドは1970年代以降、美食で知られるフランスの地に「ひどい食事」を上陸させ、何百万というフランス人に高カロリーの米国風ファストフードを広めてきたと責められていた。

 また世界のどの国よりも自国の言葉や文化の保護に熱心で、グローバリゼーションに今も懐疑的なフランスで、マクドナルドは米国の経済や文化帝国主義のシンボルとして、特に左派の抵抗を受けた。

 かつて大統領選に出馬したこともあるフランスの農民運動家ジョゼ・ボベ(Jose Bove)氏は、1999年に仏南部で店舗を破壊するなどマクドナルドへの反対運動を通じて、政治キャリアを築いていった。

 しかし、事態は反転。食に関するフランスの純粋主義者たちはむせ返るかもしれないが、南部マルセイユ(Marseille)の貧しい郊外では、政治家を含む運動家たちが今、マクドナルドを閉鎖に追い込むためではなく、救うために動いている。

 先月、マルセイユのマクドナルドを訪れた左派強硬派の地元議員、ジャンリュック・メランション(Jean-Luc Melenchon)氏は歓声と拍手を浴びながら、こう述べた。「外から見れば、他のレストランと変わらないかもしれない」「しかし、この店はこの地域で唯一続いている場所であり、友人と一緒に何か飲んだり食べたりできる場所である」

 マクドナルドの閉店を回避しようというこの運動には、地元の社会党や共産党の関係者も加わり、多国籍企業への反対運動で知られる政治家らが、異例の展開を繰り広げている。

 だが、この運動によってもう一つ、フランスの貧しい郊外で、米国のファストフードチェーン大手が地域コミュニティーの柱になっていること、つまり、そうした郊外には他の施設やビジネスチャンスがないことが浮き彫りになっている。