【9月2日 AFP】中南米からメキシコ国境を不法に越えて米国を目指す移民。彼らを支えている女性たちがメキシコ・ベラクルス(Veracruz)州の村コルドバ(Cordoba)にいる。「十二使徒」と呼ばれる彼女たちは毎晩、アメリカンドリームを追い求め貨物列車に飛び乗った人々に、水や食料を投げたり手渡したりして彼らの危険な旅を支援している。

ノルマ・ロメロ(Norma Romero)さんは23年前、コルドバで停車した貨物列車から降りてきた男性たちに助けを請われ、その言葉に中米のアクセントがあったことから、国境を越え米国を目指す人たちが同列車に乗っていることを知った。空腹だった彼らにパンと牛乳を渡したその日以来、23年間毎日、ロメロさんと「十二使徒」の仲間たちは、母国における貧困と犯罪組織の抗争を逃れてきた人々を助ける活動を続けている。


しかし、この活動は一歩間違えれば非常に危険で、手の指3本を失いかけたボランティア女性もいるという。

貨物列車は「ザ・ビースト(The Beast、野獣)」と呼ばれており、貨車の屋根などに飛び乗った人々は事故で手足を失ったり、死亡したりするほか、犯罪者や時には警察官に襲われることもある。

車上で食料を受け取った人々は「メキシコ!」「ありがとう!」と叫びながら、列車と共に夜の闇に消えていく。ロメロさんたちは、彼らが旅を続ける支えになれることに喜びを感じつつも、若者たちが母国を出て危険を冒さなければならないことに心を痛めている。

ロメロさんの自宅は、貨物列車を降り一時的に同村に滞在する人々のシェルターになっている。移民に渡す水や食料は、地元商店などからの寄付でまかなっており、滞在者たちが料理や皿洗いを手伝う。

貨物列車に乗っている全員に食料などが行き渡るわけではないが、ロメロさんは語る。少なくとも彼らは希望を持って旅を続けられると。

映像は8月9~10日撮影。(c)AFP