【8月31日 AFP】カンボジアの裁判所は8月31日、昨年解党させられた野党の集会を取材中に逮捕されたオーストラリア人映画監督ジェームズ・リケットソン(James Ricketson)被告(69)に、スパイ行為などの罪で禁錮6年の有罪判決を言い渡した。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)は、「ばかげた茶番劇」だと裁判を非難している。

 リケットソン監督は昨年6月、当時の最大野党「カンボジア救国党(CNRP)」の集会で上空にドローンを飛ばした後、逮捕・勾留されていた。CNRPは昨年11月、カンボジア最高裁によって解党させられた。

 CNRP解党により、今年7月の下院総選挙ではフン・セン(Hun Sen)首相率いる与党「カンボジア人民党(CPP)」が全議席を獲得し圧勝。欧米の民主主義諸国から、有力野党不在の欠陥選挙だと非難を浴びている。

 裁判所は6日間の審理の後、スパイ行為の罪と国防に影響しかねない有害情報を収集した罪で、禁錮6年の有罪判決を言い渡した。検察当局は、リケットソン監督がカンボジアで長年にわたり、映画制作を隠れみのにスパイ活動を行っていたと主張していた。

 リケットソン監督は法廷で「信じられない――いったい私がどの国のためにスパイ活動をしたというんだ?」と大声で訴えた。被告側弁護人は、カンボジア国王に恩赦を求める方針を報道陣に明らかにした。

 カンボジアでは今週、総選挙前に収監されていた野党の議員と活動家14人が、フン・セン首相に謝罪の書簡を書いた後、釈放された。フン・セン首相は、この書簡を国王に送ると述べていた。(c)AFP