【9月1日 AFP】元陸上男子短距離の王者ウサイン・ボルト(Usain Bolt)氏が31日、サッカー豪Aリーグのセントラルコースト・マリナーズ(Central Coast Mariners FC)で子どもの頃からの夢をかなえ、サッカー選手として念願のデビューを飾った。プレシーズンゲームとしては記録的な約1万人を動員したこの試合でボルト氏はファンを熱狂させたが、出場時間は約20分にとどまった。

 イングランド・プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)の熱狂的ファンとして知られるボルト氏は、選手契約を目標にマリナーズの練習に無期限で参加することを認められている。同氏がチームに合流して以降、シドニーから75キロメートル北部のゴスフォード(Gosford)に拠点を置くマリナーズの本拠地は大騒ぎとなっている。

 ユナイテッドの本拠地オールド・トラフォード(Old Trafford)のような雰囲気というわけにはいかなかったが、試合が行われたセントラルコースト・スタジアム(Central Coast Stadium)は、観客を盛り上げるためのブラスバンド演奏などで熱気に包まれていた。

 マリナーズが6-1でセントラルコースト(Central Coast)選抜を下した試合後、ボルト氏は「プロという高いレベルでプレーできるのは、素晴らしい瞬間だ」、「良かったし、期待通りだった。観客が盛大な拍手で迎えてくれて本当にありがたかった。少し緊張したけれど、フィールドに立った途端にそれは消え去った」とコメントした。

 前週に現地入りしてから練習は限られていたものの、人類最速の男は控えとしてマリナーズがアマチュアチームを粉砕するところをベンチから熱心に見守っていた。この夜は肌寒い気候で、サイドラインでストレッチやジョギングしながら体を温めていた32歳は、ファンに親指を立てたりハイタッチしたりしながら出番を待っていた。

 そして、ついに試合開始から71分、自身が樹立した陸上男子100メートルの世界記録にちなんだ背番号95のユニホームを着たボルト氏がピッチに入ると、観客からの大声援と花火でスタジアムが沸き立った。

 左ウイングに入ったボルト氏は、味方のパスを受けるためにインサイドに走り込んだ際、タイミングが合わずにボールをかかとに当ててファーストタッチは失敗に終わった。しかし、10分後には右足でボールをコントロールしながらディフェンスをかわし、最後は左足で味方にパスを出すという最大の見せ場をつくった。

「もっとボールに触りたかったけれど、まだ調整が十分ではない。とにかく練習に励んでスピードをつけていく。最高のシーズンになることを期待している」

 この試合を観戦していた元オーストラリア代表のロビー・スレーター(Robbie Slater)氏は、ボルト氏にはまだ多くの課題が残っているとして、「彼には試合で戦うためのフルスピードが足りない」と分析した。

「良い走りも見せていたが、いつどこに走り込むのかという点をもっと学ぶ必要がある。それに、もっと積極的にボールを取りにいくための自信もつけなければ。とはいえ、彼にとっては特別な瞬間だった」(c)AFP