「記憶に留めておく一枚の報道写真」

世界の油による海洋汚染の四分の三は、船舶からの流出に因るものである。一度海中へと流れ出た油の回収は困難であり、生態系のみならず、人間の健康や産業にも影響を及ぼす。写真は、中国沖にて香港籍船と衝突したタンカーから流出した、海洋を覆う油膜である。海難事故による海洋汚染は世界中で起こりうるものであり、現代の生活を営む上で避けられないリスクである。今回の原油流出は特に日本に影響のある位置で発生しており、さらに海難事故に因るものとしては世界最悪の規模である。こうしたなか、当事国である日本のメディアは発生当初の報道にとどまり、多くの人々の印象は希薄なままでいる。かつて、環境問題が一大ムーブメントとなっていた時代には、メディアの継続的な報道によって多くの日本人が環境について考える基盤を得ていた。長期的に被害をもたらすこの人為的な環境被害に対し、メディアの協力が求められる。


成蹊大学 竹田頌 資源環境セクション