【8月23日 AFP】カメはどうやって甲羅を手に入れたのか? まるで昔話の始まりみたいだが、これは科学者たちが長年考え続けている問いだ。この謎解きの手がかりを与える研究論文が23日、英科学誌「ネイチャー(Nature)に掲載された。

 骨と一体化した甲羅、歯がないくちばしのついた顔――このような特徴を備える現代のカメにどのように進化したのかは、「永遠に解けない進化の謎の一つ」とされてきた。初期のカメの化石の発見数は少なく、祖先が何なのかさえもわかっていない。

 今回の研究では、中国で発見された2億2800万年前のカメの化石を分析。この化石にはくちばしも歯もあり、歯のあるカメが今日のカメの形に進化した過程をつなぐ「失われた環」になる可能性があるという。

「くちばしがある初期のカメの化石が発見されたのは初めて」と、論文の共同執筆者で中国科学院(Chinese Academy of Sciences)研究員の李淳(Chun Li)氏は指摘。カメは学名「エオリンコケリス・シネンシス(Eorhynchochelys sinensis)」と命名された。

 李氏はAFPの取材に対し、「くちばしが発達している一方で、歯も残っているのが興味深い。くちばしと歯が半分ずつの顎が備わっており、進化の過程を特徴づける素晴らしい見本だ」と述べた。

 化石の全長は2.5メートルと大型で、長い尾と背中に沿う広く平らな肋骨がある。この肋骨が、円盤状の甲羅の原型を形成したと考えられる。

 カメの祖先が何かということは、証拠があまりにも限られていたため、議論を呼んできた。爬虫類と祖先が同じだという説があるが、現代のカメの骨格から判断するとその説はあり得ないという専門家もいる。

 李氏は、この化石により、カメの祖先は大部分の爬虫類と同じという説が強くなったと語り、この化石を「カメの初期進化の重要な失われた環」と評した。

 カメに関しては、腹甲(腹側の甲羅)が完全に形成されているものの背側の甲羅はない2億2000万年前の化石や、甲羅がまったくない2億4000万年前の骨などが近年発見されている。(c)AFP