【8月26日 AFP】米ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)郊外のアッパーダービー(Upper Darby)にあるその自動車整備工場は、一見したところ、町内にある3軒の整備工場と何ら変わりはない。中に入ると、ラジオから大音量でクラシック・ロックが流れ、8月のうだるような暑さに作業場には熱気がこもる。

 頭にバンダナを巻き、黒のタンクトップにショートパンツ姿で、リフトで頭上まで持ち上げられた車両を点検をしているのは、女性整備主任のスー・スウィーニー(Sue Sweeney)さん(42)。もう1人の女性整備士が作業台から道具を取り、スウィーニーさんに手渡す。

「ガールズ・オート・クリニック(Girls Auto ClinicGAC)」へようこそ。ここは、男性が圧倒的多数を占める自動車業界で古い慣習を打ち破って立ち上げられた、女性整備士による整備工場だ。

 GACの創業者で最高経営責任者(CEO)のパトリス・バンクス(Patrice Banks)さん(31)は、「自動車業界では女性であるために嫌な経験しかなかった」と、AFPに語った。バンクスさんは2012年まで技術研究所でマネジャーとして働いていたが「ギアチェンジ」を決意。専門学校に通って自動車整備士となった。

■「女性が自信を持てるように」

 当初、月1回の女性向けワークショップとしてスタートしたGACは整備工場として成功。昨年には、顧客のほとんどを占める女性たちのため、ネイルサロンを併設してオープンした。

「女性客たちが歓迎されていると感じられ、自信を持ってもらえるような店をつくりたかった」と、バンクスさんは笑顔で語った。GACでは、従業員10人のうち9人が女性だ。

 GACはオープンからまだ1年ほどだが、すでに常連客を獲得している。バンクスさんによると、顧客の75%は女性。他に例のないこの整備工場を訪れるため、遠方から車を走らせて来る客も多いという。

 ここアッパーダービーでの成功を糧に、バンクスさんはGACを全米でチェーン展開したいと考えている。すでにクラウドファンディングを立ち上げており、2019年には2店舗、20年には3店舗をオープンさせる計画だ。(c)AFP/ Katie SCHUBAUER