【8月21日 AFP】ドイツは21日、ナチス(Nazi)の強制労働収容所の元看守で、米国の市民権を剥奪された男性(95)の受け入れを発表した。この収容所では、6000人以上が殺害されたとされる。

 独外務省は、19日夜に米国から追放されたウクライナ出身のヤキブ・パリー(Jakiw Palij)氏を受け入れることで合意したと発表。ナチスの犯罪という観点において「道義上の義務」だとしている。

 また同省は、「米政府と上下両院議員、および在米のユダヤ人団体代表が、悪しきナチス政権に仕えた者はその晩年を、自らが選んだ国、つまり米国で平和に暮らせるべきではないと強調している」と説明。米国が繰り返し受け入れを求めていたと明かしている。

 ただ、独政府はパリー氏が同国の市民ではないとの理由で、長い間受け入れに消極的な姿勢を見せていた。

 米司法省によると、パリー氏は1949年に渡米。入国管理官に対して違法に、ナチスの過去を隠していたという。57年に米国に帰化したものの、2003年に連邦判事がパリー氏の市民権を剥奪。翌04年には移民判事が、パリー氏がナチス占領下のポーランドに設置されたトラウニキ(Trawniki)強制労働収容所で看守を務めていたことを理由に、ウクライナへの送還命令を出していた。

 その一方、米ホワイトハウス(White House)は声明で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の生存者とその家族にとっての自由を保証するため、パリー氏の追放に高い優先順位をつけていたと説明。「パリー元看守の追放は、米国はナチスの犯罪やその他の人権侵害を助長した者を容赦しない、これらの者は米国土に安楽な避難場所を見いだせはしないという、強いメッセージを送るものだ」との声明を出した。

 独メディアは、パリー氏が21日にデュッセルドルフ(Duesseldorf)空港に到着し、高齢者養護施設に送られると報じている。(c)AFP/Deborah COLE