【8月21日 AFP】英国のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)外相は21日、訪問先の米国で演説を行い、厳しい制裁を科すなどによってロシアの「有害な行為」への対策を強化し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領をけん制するよう米国と欧州各国に求める見通しであることが分かった。

 今年7月にボリス・ジョンソン(Boris Johnson)前外相の後任に就任して以降、ハント氏による訪米は初。ハント氏は米首都ワシントンにあるシンクタンク「米国平和研究所(US Institute of Peace)」で演説する予定で、英外務省が公開した演説原稿の抜粋によると「既存の国際的な行動規範がロシアのような大国によって繰り返しないがしろにされている」と呼び掛ける。

 また「このような好戦的かつ有害な行為は、われわれの安全を維持する国際秩序を損なう」とした上で、「もちろんロシアとの関係は維持すべきだが、われわれは率直でもなければならない。プーチン大統領の元で進められているロシアの外交政策は世界をより危険な場にしている」とも訴えるという。

 今年3月、英イングランド南西部でロシア人元二重スパイのセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏と娘のユリア(Yulia Skripal)さんが旧ソ連によって開発された神経剤にさらされ重体となった事件が発生し、英政府はロシア政府を非難。以来、両国の関係は危機的な状況に陥っている。

 ハント氏は22日にマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官との会談が予定されているが、演説原稿によるとハント氏は米国をはじめとする同盟国に対ロ政策でさらなる協力を呼び掛ける予定だ。

 ハント氏は「対ロ制裁が包括的なものであり、米国とは真の協力関係にあるということを確かにするよう欧州連合(EU)に呼び掛けるとともに、英国はさらに踏み込んだ対応を同盟国に求めていく」との姿勢を示すという。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権は定期的にロシア政府に制裁を発動しているものの、プーチン氏との関係を改善させたいトランプ氏の意向によってたびたび対応が混乱している。

 このような状況についてハント氏は北大西洋条約機構(NATO)の「信頼性」が損なわれているとし、「われわれの価値観を共有しない者が領土の侵略や禁止兵器の使用、ますます増加するサイバー攻撃など一線を越えることがもしあれば、必ず深刻な代償を払うことになると知っておく必要がある」と警告する予定だ。(c)AFP