【8月20日 AFP】2019年のラグビーW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)に向けて新設された球技専用スタジアム、釜石鵜住居復興スタジアム(Kamaishi Unosumai Memorial Stadium)が19日に開場した。地元の人たちは、スタジアムが東日本大震災からの復興の力強い象徴となり、楕円(だえん)のボールをきっかけに街が一つになることを期待している。

 スタジアムは津波で倒壊した二つの学校の跡地に建てられ、常設スタンドは6000席だが、W杯では仮設スタンドを設置して1万6000席まで増やす。W杯では来年9月25日にプールDのフィジー対ウルグアイ戦、同10月13日にはナミビア対予選通過チームの試合が行われる予定となっている。

 この日の開場イベントでは、ジャパンラグビートップチャレンジリーグの釜石シーウェイブス(Kamaishi Seawaves RFC)とトップリーグのヤマハ発動機(Yamaha Jubilo RFC)の試合などが行われ、シーウェイブスは24-29で惜敗した。W杯イングランド大会(Rugby World Cup 2015)の歴史的な南アフリカ戦勝利の立役者の一人で、ヤマハでプレーしている五郎丸歩(Ayumu Goromaru)は、震災からわずか2週間後に釜石で試合をしたときのことを振り返りながら、「きょうここに来られたのは、自分たちにとって本当に大きなこと」と話している。

 人口3万5000人ほどの釜石市は、かつて鉱山の町でラグビーとのゆかりが深い「ラグビーの街」として知られている。1980年代前半には地元の新日鉄釜石ラグビー部が日本選手権7連覇を達成し、その圧倒的な強さから、チームは「北の鉄人」と呼ばれた。

 その後チームは、釜石シーウェイブスとして再編。2011年3月11日に東日本大震災が発生した後は、チームが一日でも早く競技に戻れるよう、地域の人たちによる支援活動も行われた。

 現役時代にシーウェイブスでSHとしてプレーした長田剛(Takeshi Nagata)さんは、W杯の試合の開催を通じて、震災後に海外から寄せられた援助への恩返しをし、復興後の姿を見せることができればと考えている。長田さんは「震災のときは、海外を含めたまわりの人たちにすごく助けられた。だから、自分たちの元気な姿や、立ち直った姿をぜひたくさんの人に見てもらいたい」と話している。

 また地域は、外国人観光客が被災地をめぐる「ドライブツーリズム」の面でも、W杯がさらなる後押しになってほしいと考えている。関係者はスタジアムが満員になることに自信をのぞかせており、長田さんもラグビーファンを呼び込む魅力の一つとして、「ここはお酒がおいしいですから」と笑顔で話した。(c)AFP