【8月16日 AFP】成長を続ける中国サッカーへの世界的な関心が高まる一方で、中国サッカー協会(CFA)は近ごろ、他国ならおとがめなしか、軽いお叱りで済ませるようなピッチ内外の問題行為に出場停止や罰金、警告を科すことを次々に発表している。

 いら立ち任せに水のボトルを蹴れば、罰金1万5000元(約24万円)と3試合の出場停止。アクセサリーをつけて中国代表の試合に出れば、1年間のチーム合流禁止。審判を批判すれば、罰金2万元(約32万円)と2試合のスタジアム入場禁止が科される。選手や指導者は、不良学生のようにCFAの前に引き出されては無実を訴え、裁定を待つ。吉報がもたらされることはまずない。

 協会の締め付けの厳しさは、ネット上のサポーターの不満を見るとよく分かる。処分の記載された書類には、必ずCFAの規律委員会を統括する王小平(Xiaoping Wang)氏の署名が入っていることから、サポーターにとっては、「処分通知」を次から次へと出すのは「王小平が書の腕前をひけらかしたいからだ」と言ってちゃかすのが一種の遊びになっている。

 習近平(Xi Jinping)国家主席が中国のサッカー強国化の目標を打ち出して以降、協会は国内サッカーへの監視を強めている。国家主席のメッセージを誤って解釈した各クラブが、莫大(ばくだい)な資金を使って海外の選手を買い集めるようになると、協会は2017年、移籍に制限をかけて「度を越した」支出を防ぐ策を考えた。

 中国を専門とするスポーツマーケティング企業レッドランタン(Red Lantern)の中国人ディレクターは、処分の乱発は「規則に一貫性と透明性がないことの表れ」だと話す。

「厳罰を科すことで、CFAや中国スーパーリーグ(CSL)は今回も『鶏を殺して猿を脅かす(見せしめにするの意)』という古いことわざを実践し、自分たちが上だということを見せつけようとしているのでしょう」

 スーパーリーグが世界のサッカーで一定の存在感を示すようになった要因でもある、海外の高額な指導者や選手たちも処分からは逃れられない。

 2017年当時にアジア最高額となる6000万ユーロ(約79億円)で上海上港(Shanghai SIPG)に加入したオスカル(Oscar dos Santos Emboaba Junior)は、同年のシーズン中、相手に向かってボールを蹴って両軍総出の大乱闘を引き起こしたとして、8試合の出場停止を受けた。

 同僚のフッキ(Hulk)はオスカルを支持するTシャツを着て2試合の出場停止に。当時チームを率いていたアンドレ・ビラス・ボアス(Andre Villas-Boas)監督も、自身のインスタグラム(Instagram)に「プロ355試合出場、プレミアで5年プレー、ブラジル代表で47試合出場、70ゴール、それでいてレッドカードはゼロ! その選手が8試合出場停止とは」と書き込み、2試合のベンチ入り禁止を言い渡された。

 チェルシー(Chelsea)やトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)を率いたイングランド・プレミアリーグ時代、誰かともめるようなタイプではまったくなかったビラス・ボアス監督は、その後に自らも審判を批判して8試合のベンチ入り禁止処分を受けた。監督は結局1年で中国を去ったが、一部からは、こうした処分が大きな引き金になったという声も上がっている。

 先週には、再び規律委員会にスポットライトが当たる出来事が起り、長春亜泰(Changchun Yatai)のMF張力(Li Zhang、チャン・リー)が「試合の通常の進行を妨げ、混乱を引き起こし、社会に悪影響を与えた」ため6試合の出場停止を科された。

 張は、上海申花(Shanghai Shenhua)のデンバ・バ(Demba Ba)に人種差別的な言葉を浴びせたとされる。しかし、処分の発表にそのことに関する言及はなく、差別発言を強く否定している張は法廷で争う構えも見せている。その中で、多くの人がこう考えている。人種差別でないのなら、6試合もの出場停止は何に対してなのか?

 レッドランタンのディレクターは、やり放題の処分について、「本来は包括的であるべきルールブックが、そうではないということの表れです。そういう実情を私はよく知っています」と話し、「それぞれの出来事が委員会の気まぐれによって扱われる、委員会裁量とでもいうべき仕組みがあるのです」と続けた。

 AFPは処分の流れについてCFAに質問を送ったが、回答はなかった。(c)AFP/Peter STEBBINGS