■「モンサタン」に別れを

 モンサントは数十年にわたって環境活動家たちから「モンサタン(悪魔のモンサント)」、「ミュータント(突然変異)」などと、その名をもじった名称で呼ばれ、非難の集中砲火を浴びてきた。欧州では、GM食品が人体に有害と広く考えられており、その傾向は特に顕著にみられる。

 運動家らはまた、グリホサートを主成分とするラウンドアップも忌み嫌っている。グリホサートについては、がんとの関連性をめぐり研究者らの間で論議が起きている。

 モンサント製品の有害性に関する悪評を断ち切ろうと、バイエルは今後、製品からモンサントの社名を外す計画だとしている。しかし、両社の合併を最悪の組み合わせとしている国際環境NGO「地球の友(Friends of the Earth)」は、これまでの名称が使われなくても同社の事業が継承される限り、抗議の矛先をバイエルに変えるだけだと述べている。

 両社の合併に関してはもう一つ、世界の種苗市場や農薬市場が限られた企業による寡占状態となって価格が高騰する恐れがあり、農家や消費者にとっては選択肢が狭められるという不満も聞こえてくる。

 また、世界で最も広く使われている除草剤のグリホサートをめぐっては、ミツバチの個体数減少など、環境に負の影響があるとして批判の対象となってきた。米環境保護局(Environmental Protection AgencyEPA)のウェブサイトによると、この薬剤は過去数十年にわたり殺虫剤としても利用されているという。

■後に続くか、ラウンドアップ訴訟

 末期がんを患った校庭管理人の男性が米カリフォルニア州で起こした裁判で今月10日、モンサントに対し、約2億9000万ドル(約320億円)の損害賠償を支払うよう命じる評決が下された。

 裁判では、ラウンドアップの発がん性についての警告を怠ったモンサントに落ち度があるとの陪審評決が出された。

 非ホジキンリンパ腫に苦しむ原告のドウェイン・ジョンソン(Dewayne Johnson)さんの今回の勝利は、モンサントに対する数千件におよぶ訴訟に道を開く可能性があると専門家らはみている。

 この評決を受けて、バイエルの株価は10%を超えて急落した。モンサント側は上訴する意向を示しており、一方、バイエルはグリホサートが含まれる除草剤は「安全」だと改めて主張した。

 独マインファースト(MainFirst)銀行のアナリスト、マイケル・リーコック(Michael Leacock)氏は、今回の裁判での敗北は、創業以来最大の買収となったモンサント獲得からわずか2か月しかたっていないバイエルにとって「不運な結果だ」と述べた。