【9月8日 AFP】中国人のジアン・チェンさん(24)は大学1年生の時に、初めてコンシーラーを試してみた。すると、自分に自信が持て、たちまちはまってしまった。

 中国では今、男性化粧品産業が好景気に沸いている。インターネット上では何百人もの男性が、美の秘訣(ひけつ)をシェアすることで、報酬を手にしている。ジアンさんもそうした男性ブロガーの一人だ。

 毎週末、ジアンさんは北京のこぢんまりした仮設スタジオでiPhone(アイフォーン)を前に、新商品のクリームやチークを試しながら数時間を過ごす。その様子はライブ動画で数百人の視聴者に配信される。視聴者は彼が試用している商品を即座に購入することもできる。

 中国では、ネット上の美容コメンテーターたちが一大産業を築いている。「ワンホン(オンライン・スター)」として知られるこうしたネットセレブたちの登場により、エンターテインメントとEコマースの境界はもはやあいまいだ。

 阿里巴巴(アリババ、Alibaba)や京東(JD.com)といった企業は、消費者が外出先でも動画の視聴中に商品を購入できるようにするために、ライブストリーミング・プラットフォームを展開。また化粧品メーカー各社は、女性がほとんどを占めるオンラインセレブに大金を支払い、新商品を試用し評価してもらっている。

 しかし今、市場や性別に関する常識が変わってきている。化粧品は女性だけのものだという見方はもはやなく、男性がチークを入れるのも問題ないという認識を、男性セレブたちが広めている。

 ジアンさんによると、複数の化粧品メーカーの商品を特集する報酬として、ブロガーのマネジメントを行う会社から月に約5000元(約8万円)が支払われている。

 市場調査会社「ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)」によると、男性美容製品市場の今後5年間の伸び率は、世界全体の11%に対し、中国では15.2%と予想されている。

■「リトル・フレッシュ・ミート」

 こうした現状の中、中国に進出する外国企業の間でも、ビデオブロガーに商品をアピールしてもらおうという動きが広がっている。仏企業の「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」や「イソップ(Aesop)」は、「ラン・プー・ラン(Lan Pu Lan)」のハンドルネームで知られるラン・ハオイ(Lan Haoyi)さん(27)とコラボし、彼の140万人に上るフォロワーに向けて自社製品の売り込みを図っている。

 ランさんは、月に最高1万元(約16万円)を美容品につぎ込んでいる。こうした流行の先端にいるのは、ハンサムな若い男性を意味する「リトル・フレッシュ・ミート」だと彼は話す。「メークをしてメディアに登場する男性が増えている。それが次第に当たり前になっていくでしょう」

 だが、中国の国際都市の多くは社会的に発展しているが、赤いアイシャドーをつけたことで批判されたり、ヘイト(憎悪)メッセージを送り付けられたりすることが今でもあると、ランさんは明かした。