【8月11日 AFP】自転車ロードレース、ツール・ド・フランス(Tour de France)の元王者として知られるヤン・ウルリッヒ(Jan Ullrich)氏が10日、母国ドイツのフランクフルトで売春婦に暴行をはたらいたとして、警察に一時勾留されていたことが判明した。同氏は殺人未遂容疑に関する捜査保留のまま、現在は保釈されている。

 ウルリッヒ氏は前週、スペイン・マジョルカ(Mallorca)島で近所に住むドイツ人俳優ティル・シュヴァイガー(Til Schweiger)氏の家に侵入し、相手を脅したとして24時間身柄を拘束されていたばかりの中、また新たな問題を引き起こした。

 10日の早朝に起きた事件について、日刊紙ビルト(Bild)は、44歳のウルリッヒ氏がフランクフルトの5つ星ホテル、ヴィラ・ケネディー(Villa Kennedy)に売春婦を呼んでいたと報じている。検察と地元警察の共同声明によると、同氏は「ホテルの一室で口論になった後、31歳の売春婦を暴行した」とされている。

 声明ではまた、駆けつけた警察官と格闘となったウルリッヒ氏について、「被疑者はアルコールや薬物の影響を受けていたとみられる」と指摘。さらには「被疑者は殺人未遂と身体に重大な危害を加えた容疑の捜査対象となっている。捜査はまだ終わっていない」と述べ、被害者の女性が「暴行に関する克明な詳細」を話している一方で、同氏が黙秘権を行使していることを明らかにした。

 しかし、ウルリッヒ氏が保釈を許されたことについて、当局は捜査保留のままであることが身柄拘束の条件を「満たしていなかった」とつけ加えるにとどまり、詳細については明かさなかった。同日行われた検察側の発表によると、同氏は「(売春婦の)首をきつく締めて気を失わせた」とされている。

 ウルリッヒ氏が今回の事件を起こしたのは、マジョルカ島で起きた前週のスキャンダルを受け、ドイツで飲酒及び薬物依存の治療を模索していた矢先のことだった。同氏は以前、ビルト紙に対して「胃腸の調子は良くて、気分がいい。これが新たなスタートになるだろう」と述べていた。

 一流のスポーツ選手が現役引退後の生活になじめず、ウルリッヒ氏のようにトラブルを抱えてしまうケースは増加している。同氏は1997年にドイツ勢唯一のツール王者となったが、約20年後にその名声が失墜してしまった。

 旧東ドイツ生まれのウルリッヒ氏は、東西ドイツが再統一された後に数々の勝利を収めて国民的英雄となった。2000年にはシドニー五輪で金メダルに輝いたものの、その後のツールではランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏の後塵(こうじん)を拝し、再び総合優勝を果たすことはかなわなかった。(c)AFP/Carsten HAUPTMEIER