【8月9日 AFP】国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は8日、今月末で退任するゼイド・ラアド・アル・フセイン(Zeid Ra'ad Al Hussein)国連人権高等弁務官の後任に、かつて独裁政権下で拷問を受けた経験を持つチリのミチェル・バチェレ(Michelle Bachelet)前大統領(66)を指名した。10日の国連総会(UN General Assembly)で承認される見通し。

 チリ大統領を2度務めたバチェレ氏は、世界で最も影響力のある女性政治家の一人で、2010年には国連の女性関連組織を統合した新設機関UNウィメン(UN Women)の初代事務局長に就任した。

 バチェレ氏の父親は、軍事クーデターでサルバドル・アジェンデ(Salvador Allende)政権を倒したアウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)将軍に反発した軍人。

 バチェレ氏自身も医学生だった1975年、ピノチェト独裁政権下で首都サンティアゴにあった悪名高い秘密収容施設「ビジャ・グリマルディ(Villa Grimaldi)」に数週間にわたって拘束された。「主に精神的な拷問を受け、殴られることもあった」が、電気ショックを使った尋問はされなかったと、バチェレ氏は2014年のインタビューで語っている。「私は運が良かった。他の多くの人たちは亡くなった」

 退任するゼイド高等弁務官はヨルダン出身で、メディア攻撃を繰り返すドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を「山道を猛スピードで飛ばす」「危険運転」のバス運転手になぞらえるなど、トランプ政権の政策を鋭く批判してきた。しかし、米国やロシア、中国などの支持を失ったことから、2期目は目指さない意向を明らかにしていた。

 ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)米国連大使は声明を発表し、後任のバチェレ氏に対し、ゼイド氏を暗に批判する形で「過去の過ちを犯さないように」と求めた。(c)AFP/Carole LANDRY