【8月9日 AFP】オーストラリア東部がここ50年あまりで最悪の大干ばつに襲われ、牧畜産業が大打撃を受けている。雨が降る見通しは当面なく、経済的・精神的に追い詰められた農場経営者らは絶望の淵に立たされている。

 過去にも大干ばつに見舞われてきたオーストラリアは、国民の干ばつへの対処能力の高さでも知られているが、今回の異常気象は東部一帯に壊滅的な影響を及ぼしている。今週初めにはわずかに雨が降ったが、記録的な大干ばつの前には焼け石に水で、牧草地や農耕地の大部分が枯れ果てている。

 農家は飼料や牧草を他地域から仕入れざるを得ず、羊や牛を生き永らえさせるためだけに毎週、何千ドルもの費用負担がかさむ。干上がった大地に草が育たないため、毎日何時間もかけて手作業で家畜に餌をやり疲れ切った農家や、飢えた牛を殺処分するほかなくなった農家もある。多くの農場経営者たちが、先祖代々住み続けてきた家を放棄しなくてはならない未来に直面している。

 ニューサウスウェールズ(New South Wales)州当局は8日、州全域が干ばつ被害に見舞われていると公式に宣言した。北隣のクイーンズランド(Queensland)州政府も、6割近くの土地が干ばつの影響を受けていると発表している。

 豪政府は先週末、苦境にある農家への緊急救済措置として1億9000万豪ドル(約157億円)の拠出を表明した。農家への資金援助に加え、カウンセリングなど精神的な健康を支える各種サービスへの支援も含まれている。市街地から遠く離れた農場で暮らす孤独感と相まって、干ばつに由来するストレスや自殺の懸念が高まっているためだ。

 農場の人々を物資で支える市街地も苦しんでいる。シドニーから北に300キロほど離れた町マラルンディ(Murrurundi)では、今年の降雨量が170ミリ未満にとどまり、飲料水が数か月中に底をつく恐れがある。地元当局が給水車の投入を検討する中、住民はシャワーを3分以内に済ませ、衣類の洗濯は週2回までといった厳しい制限の中で暮らしている。(c)AFP/Glenda KWEK