【8月11日 AFP】史上最悪の原発事故が起きたウクライナのチェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所周辺の立ち入り禁止区域は不気味な静寂が漂っているが、原発の近くにある建物は動物のほえる声や甲高い鳴き声で満ちている。

 この長い平屋建ての建築物は、1986年の事故発生後に発電所従業員向けの急ごしらえの医療センターとして利用されていた。

 今日この建物は、炉心溶融(メルトダウン)後の住民の避難から長い時がたった今も半径30キロメートル圏内の立ち入り禁止区域に残っている迷い犬のための医療施設になっている。

 ルーカス・ヒクソン(Lucas Hixson)さんは、2013年に放射線専門家として初めて米国からこの原発事故現場にやってきた。だがまだ多数の犬がこの地域にいることに驚き、犬たちの里親探しやワクチン投与などを行うプロジェクト「チェルノブイリの犬(Dogs of Chernobyl)」を立ち上げた。

 犬好きのヒクソンさん自身も2017年、立ち入り禁止区域にいた犬をペットとして引き取った。その犬には、ウクライナ語で「2」を意味する「ドゥバー」と名付けた。チェルノブイリから里親に引き取られた2番目の犬だからだ。2匹とも今は米国で暮らしている。

 AFPの取材に応じたヒクソンさんは、「発電所に行って最初に気付くことの一つは犬たちだ」と語った。「犬たちは放射能の危険を知らせる標識を読むことができない。彼らはただ走って好きなところに行くだけだ」

 この犬の里親プロジェクトを統括する米団体クリーン・フューチャーズ・ファンド(CFF)のデータによると、人の居住が認められていない地域にいる野良犬は約1000匹に上る。

 発電所周辺に約150匹、チェルノブイリ市内にさらに300匹、残りは検問所や消防署周辺の他、数百人が非公式に住み着いたと考えられる村々にいる。