■トランプ大統領の擁護が暗黙のメッセージに

 またテネシー州で下院の予備選に出馬しているトランプ支持者のタイラー氏は、自身の選挙運動用のウェブサイトに、南北戦争(American Civil War)時代の南部連合の戦旗がホワイトハウス(White House)の上でたなびくデザインの画像を掲載している。同氏の選挙運動用の看板広告には、「米国を再び白人の国に」と書かれたものもある。

 専門家らは、今年は偏った意見を公言する候補者がかつてないほど多く、それを助長している主な要因は米国大統領本人にほかならないと指摘している。

 公民権擁護団体「南部貧困法律センター(SPLC)」の専門家で、1999年からヘイト(憎悪)グループの追跡調査を行っているハイディ・バイリック(Heidi Beirich)氏はAFPの取材に対し、「トランプ氏による人種差別的で反イスラム的、偏見に満ちた型破りな言葉遣いが、これまで政界に存在しなかった扉を開けてしまった」と話した。

「これまでにもネオナチの問題は少しはあったが、今は以前よりもはるかに状況が悪化している」

 バージニア州などでは、人種・民族間の分断が政治にはっきりと反映されている。同州の共和党上院議員候補で、反移民の立場を取る郡執行官、コーリー・スチュワート(Corey Stewart)氏は、物議を醸す人々と交流があるせいで激しい批判にさらされている。

 スチュワート氏は、ネーレン氏のことを「私の個人的ヒーローの一人」と称賛。昨年8月にバージニア州シャーロッツビル(Charlottesville)で死者を出した白人至上主義の集会を主催したジェイソン・ケスラー(Jason Kessler)氏と一緒に姿を見せたこともある。

 しかしスチュワート氏はその後、両氏との関係を否定。この行動に同氏への考えを改めた有権者もいたのか、6月20日の予備選では共和党候補者に選出された。

 スチュワート氏は先週、2016年の大統領選でヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏の副大統領候補だったティム・ケーン(Tim Kaine)民主党上院議員との公開討論に臨んだが、そこでも「私の体に人種差別主義者の骨はない」と主張した。

 しかしバージニア州の「歴史的遺産」、南部連合の記念碑の熱心な保存推進派としての立場は維持しており、同記念碑の撤去には強く反対している。

 共和党は、ジョーンズ氏やネーレン氏をはじめとする過激な候補者数人を認めていない。

 しかしSPLCのバイリック氏は、物議を醸す共和党候補者をトランプ氏が擁護することが、党の非主流派に対して、政治的な議論の場に彼らの居場所があるという暗黙のメッセージになっていると指摘する。

 そうした非主流派の一人であるアリゾナ州のジョー・アルパイオ(Joe Arpaio)元保安官は、不法移民への強硬な取り締まりで有罪判決を受けた後トランプ氏に恩赦され、現在、上院議員選に出馬している。(c)AFP/Michael Mathes