■組織のタトゥーを「消したい」

 リナレス受刑者は数年前、ここで服役中の最も暴力的な受刑者の一人に数えられていた。だが今では、13歳のときに祖母から習ったパン作りを他の受刑者たちに教えている。

 この刑務所には1585人の受刑者がいるが、その数は本来の定員の5倍近い。大半は、殺人や恐喝、犯罪組織に所属したなど、重大犯罪によって服役している。

 エルサルバドル刑務所運営責任者のマルコ・トゥリオ・リマ(Marco Tulio Lima)氏の説明によると、当局は2016年8月以降、組織からの脱退と社会復帰プログラム「私は変わる」への参加を希望する受刑者たちの選別をするようになった。

 何年も社会から隔離されている受刑者たちにとって、同プログラムの決まりは非常に厳しい。自由時間も面会もなく、アルコールの摂取は禁じられている。

「生活態度の変化は、彼らの社会復帰を早める」「組織から完全に足を洗いたいと強く思うようになり、タトゥーを消してほしいとさえ言うようになる」とリマ氏は話す。

 全身を覆うように入っていることもあるタトゥーは、ギャングのメンバーであることを明白に示すものであり、出所後の就職活動や社会復帰の障害となる。それを除去することは、文字通りそれまでの人生から脱皮するようなものだ。

「私たちは、タトゥーの除去を望んでいる。タトゥーを隠し続けることはもう望んでいない」。写生と絵画のワークショップに参加していた元MS-13メンバーのマルビン・パラシオス受刑者(31)はそう語った。殺人罪で13年間服役している彼は、今月にも出所できることを望んでいる。

 だが、彼は不安も隠せない。出所後、左右の腕に残された「M」と「S」のタトゥーが、自分を死に追いやる可能性があるからだ。ライバル組織のギャングたちは、敵に遭遇すれば殺すことをためらわないだろう。(c)AFP/Carlos Mario MARQUEZ