【7月27日 AFPBB News】スプレー塗料などを使ったグラフィティで町おこしをしようという試みが鳥取県大山町の御来屋(みくりや)港で行われ、米ハワイなどから集まったグラフィティ作家と地元の住民が一緒になって、町内の空き店舗などをカラフルに染め上げた。約1週間続いた活動は、1日の日没と共に完成。ハワイなどから参加した作家らが、地元の自然や住民との交流からインスピレーションを受けた作品をまとった建物が、大山のふもとの漁港に溶け込んでいる。

 イベントは、実行委員会会長で町議を務める加藤紀之さん(42)らが中心になって企画した「KAI(カイ)フェス2018」。ハワイ・オアフ(Oahu)島を拠点に活動するアーティストのプライム(Prime)ことジョン・ヒナ(John Hina)さんら活動に賛同する作家5人が、国内外から大山に集まって制作に当たった。イベント名は、大山の「海」と、ハワイの現地語でも海を意味する「カイ」とを掛け合わせたという。

 グラフィティの制作は、単に建物に作品を描くだけでなく、地元の子どもたちから大人まで、作品づくりに参加するという手法を取った。希望者は自分の手をさまざまな色に染め、手形を制作場所の壁にペイントすることから始めた。また、大山の湧き水を地元の許可を得てくみ出し、制作時に使用した。

 一方、作家らは住民の家にホームステイしながら地元の人たちと交流し、大山の街や自然から受けたインスピレーションを元にグラフィティを描いた。作品が完成すると、それぞれのアーティストによる解説ツアーを実施し、作品の背景やメッセージなどを地元の人たちに説明したという。

「コミュニティーの人たちを一つにする、特別なイベントだったよ」とヒナさん。地元に伝わる狼の伝説を描いたグラフィティを見た子どもが、親に「どうして狼なの」と尋ねると、親たちがその言い伝えを子どもに語って聞かせていた。「そうして、世代から世代へと受け継がれていく。世代間のギャップを埋めることができて、素晴らしいイベントになった」

 ヒナさんの考えるアートとは、自分の内面だけでなく、ハワイに生まれた者として先祖から受け継いだものを感じ、作品に表現することだという。ヒナさんは、作家活動のかたわら、NPOを運営して地元ハワイの子どもたちにグラフィティアートを教えている。

「大きな壁に絵を描くには数学が必要だし、学校では教えないハワイの歴史についても知る必要がある。学校が嫌いな子でも、グラフィティをやりながら学べることがたくさんあるんだ」

 イベントを含む制作期間は、7月下旬の約1週間。アートとはいえ、イベント開始時には壁面を提供する建物は1軒しか決まっていなかったが、最終的には建物5棟、壁面にして10面と、消波ブロックをペイントした。実行委員会会長を務める加藤さんは、「街がかつてにぎわったように、観光客にもたくさん訪れてもらえるようにしたい」と話している。(c)AFPBB News/Yumiko Horie