【7月27日 AFP】太陽の光が降り注ぐ、米フロリダ州沿岸地域の住宅価格が高騰している──。開発業者らは、海岸からわずか数ブロックの場所に新しい建物を次々と建てて新築物件としてリストに掲載し、それぞれが洪水保険が必要ない「非洪水区域」にあるとの説明を書き込んでいる。

 しかし専門家らは、海面上昇のリスクを知りながら問題を見て見ぬふりしたとしても、近い将来に起こるであろう浸水被害による経済危機はまぬがれないと警鐘を鳴らしている。これらの物件は今後、安全が確保できず居住不能となる恐れがあるほか、あまりにも高額で保険をかけることさえも難しくなることが危惧されている。

 現実を突きつけられる瞬間は、多くの人々が考えているよりずっとも早く訪れるかもしれない。6月に発表された米非営利団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」の報告書では、今後30年の間に、同州沿岸の住宅6万4000戸に恒常的な浸水するリスクがあることが指摘された。これら住宅の価値は総額260億ドル(約2兆9000億円)相当に上るという。

 また全米規模では、今日の市場価値で総額約1200億ドル(約13兆円)に上る、海沿いの住宅31万1000戸が、2045年までに恒常的な浸水リスクに直面することも指摘されている。

 現在の傾向が続けば、米国では今世紀末までに、商業用と個人用を含む総額1兆ドル(約110兆円)以上の不動産がリスクにさらされる恐れがある。「最も影響を受けるのは、フロリダ州沿岸地域の不動産」だと同報告書には記された。

 その原因は、ハリケーンや暴風雨の発生リスクの上昇ではない。高潮だ。高潮による洪水で道路や歩道、店舗、住宅などに水害の影響が及ぶのだ。

 UCSの気候・エネルギープログラムで主任エコノミストと政策責任者を務めるレイチェル・クリータス(Rachel Cleetus)氏は、「これは比較的近い将来のリスクで、土地の完全な水没が起きるよりもずっと前に起き得る。嵐の有無は関係がない」と述べている。

 AFPの取材に同氏は、沿岸地域での現在の不動産市場では、こうしたリスクは考慮されていないとした上で、「だが、その認識は変わる可能性があり、一部地域ではその変化が急速に訪れることも予想される」とし、市場の見直しは「不可避」と指摘した。