【7月26日 AFP】母親と一緒にメキシコを通過して米国へ向かう危険な長旅を果たした幼い少年、ホセ君は、頭が混乱して怒っている。

 ホセ君は何か月も母親(51)に会っていない。4歳の誕生日にはスパイダーマン(Spiderman)のピニャータ(キャンディーやおもちゃが詰まったくす玉人形)をくれる約束だった。誕生日はやって来たが、母親はいなかった。迎えに来ると言ったのに、まだ来ない。うそをついたんだ、とホセ君は言った。

 実はホセ君の母親は、息子が知らないうちに米国内で勾留されていた。ホセ君の養母であるホンジュラス人の彼女は、米国に入国するための正式書類を持っていなかったのだ。

 メキシコ経由で米国を目指す子どもたちの大半は中米諸国出身で、犯罪や家庭内暴力、貧困、教育や医療の欠如から逃げてきた。さらにこうした危険から逃れる旅を終えた後も、もっと形のないさまざまな理由で弱者となる。複雑怪奇な制度を通り抜けることを困難にする、書類の不足や虚偽の情報、法的代理人の欠如などだ。

 ホセ君の場合もそうだ。ここではホセ君および親族の氏名は、報復を恐れる本人たちの要請により、匿名を使用している。

 ホセ君の養母は昨年12月29日に、メキシコ国境に近いテキサス州マッカレン(McAllen)で亡命申請した際に勾留された。

「ママはうそをついている。ママは来ないよ。来ないんだ」。ホセ君は2人を援助している人権派弁護士に向かって電話越しに、怒りを込めて言った。お母さんに会いたいかと聞かれると「うん。とっても」と返事した。

 ホセ君は1か月近く保護施設に置かれた後、テキサス州内にいる姉のEさん(30)に引き渡された。「ママはもう1か月、ホンジュラスにいたら、殺されていたところだった。だからここへ来たのです」とEさんは言った。「ママのことを殴る男がいた。近所の人がいなかったら、山刀で殺されていた」

 米連邦裁判所は6月、国境で親や保護者から引き離された子ども数千人を、7月26日までに再合流させるよう命じた。そのうち5歳以下の子ども103人を対象とした引き渡し期限は、すでに過ぎた。だが政府が親元に戻すことができた子どもは、わずか57人だ。

 残りの親子は、親がすでに国外退去処分にされていたり、犯罪歴やその他、政府が親子を引き離す根拠に挙げる問題があるとして不適格と分類されている。