■書類一枚

 ホセ君の姉は、ホンジュラスで自分の母親がホセ君を育てるに至った経緯を語った。近所に妊娠した少女がいて、彼女はホセ君が生まれたその日に養母に渡した。「近所の人が全員、証人としてサインした。少女はいつも、子どもが生まれたら人にあげると言っていたので、みんなが事情を知っていた」。しかし、米政府にとってはこの説明は十分でない。

 ホセ君の問題を担当している移民弁護士のサラ・ラメイ(Sara Ramey)氏は、テキサス州サンアントニオ(San Antonio)の非営利組織「人権のための移民センター(Migrant Center for Human Rights)」の所長だ。彼は写真や目撃者の証言、医療記録を収集して、養母がどのようにホセ君の世話をしてきたかを明らかにした。

「ホンジュラスを含む多くの中米社会には、子どもの親権のような問題を扱うに当たって公の制度とは異なる、地域社会に根ざしたやり方がある」と、ラメイ氏はAFPに語った。「われわれは米政府に親子関係の確認を望んでいる」とラメイ氏。「2人の関係を検証し、それが子どもにとって健全で安全な関係であるということを確認してほしいのだ」

 ホセ君親子の事例では、当局もそれを確認し、母親がホセ君の良き保護者であることを疑う人はいない。ラメイ氏は「彼女の事案が足止めされている唯一の理由は、たった一枚の紙、公の文書なのだ」と述べ、養子縁組証明書について言及した。