【7月26日 AFP】女子体操選手への性的暴行を繰り返して有罪となったラリー・ナサール(Larry Nassar)受刑者が、刑務所内で暴行を受けたことと、偏見を持った裁判官に判決を下されたことを理由に、裁判のやり直しを求めていることが分かった。

 米国体操連盟(USA Gymnastics)の元チームドクターだったナサール受刑者は、体操の全米女王や五輪金メダリストを含む多数の選手に対し、数十年にわたって性的暴行を繰り返していたことを認めた。そして児童ポルノ所持と性的暴行により、三つの裁判で有罪となり、事実上の終身刑を科された。

 しかし25日に公開されたミシガン州の法廷文書によれば、受刑者は同州ランシング(Lansing)で行われた1月の裁判について、担当のローズマリー・アキリナ(Rosemarie Aquilina)裁判官が公平性を欠いていたことを理由に、再審を求めているという。

 この裁判では、量刑の言い渡しを前に、約160人の被害者がテレビ会議のシステムも使い、7日間にわたって痛切な証言を行った。アキリナ裁判官は、被害者を「生き残った姉妹たち」と呼んで一人一人に温かい言葉をかけた一方、ナサール受刑者に対しては「あなたには今後、刑務所の外に出る資格はない」と宣告して40年から175年の禁錮刑を言い渡し、その率直で辛らつな物言いがニュースでも話題になった。

 弁護団は「全世界が注目している中、ナサール医師を悪魔として描き出そうというアキリナ裁判官の試みは成功した。医師はイートン郡(Eaton County)の裁判所内で攻撃され、さらに連邦刑務所でも襲撃に遭った」と述べている。同郡で行われた裁判では、被害者の父親の一人がナサール被告に飛びかかろうとし、警備員に止められる場面があった。刑務所内であったという暴行については、詳しいことは分かっていない。

 弁護団は、「異例の厳罰を下すことを望んでいると公言し、刑務所内で痛い目に遭うだろうと話し、さらには医師の『死刑宣告』に署名するとも発言している」アキリナ裁判官は適切な量刑を下せる人物ではなかったと主張し、別の裁判官による量刑の再検討を求めている。(c)AFP