【7月25日 AFP】仏南部の山岳地帯でこのほど、56万年前の子どもの乳歯が見つかった。研究者チームが24日に発表したところによると、この「類いまれな化石」を発見したのは、フランスとスペインから現地入りしていた発掘調査ボランティアだった。

 乳歯化石は23日夕方、仏トータベル(Tautavel)にある先史時代の広大な洞穴遺跡「アラゴ洞窟(Arago Cave)」で発見された。この遺跡はスペインとの国境にあるピレネー山脈(Pyrenees)のフランス側に位置している。

 この歯は、現生人類の亜種の1つであるホモ・ハイデルベルゲンシス(Homo heidelbergensis)のものである可能性が高いことが、遺跡の研究所で確認された。ホモ・ハイデルベルゲンシスは、現生人類とその祖先のホモ・エレクトス(Homo erectus)の両方と共通する特徴を持っている。

 トータベルの研究所に所属する仏ペルピニャン大学(University of Perpignan)の古人類学者トニー・シュバリエ(Tony Chevalier)氏は「この歯は5~6歳の子どものものだった可能性が高い。乳歯がまだ生えていたが、かなり使い込んでいた」と説明した。

 乳歯の推定年代は56万年前(誤差プラスマイナス5000年)で、1971年に同遺跡で頭蓋骨が発見された有名なトータベル人(Tautavel Man)よりも10万年古いと考えられる。

 研究チームによると、今回の発見が「類いまれな」ものである理由は、この時代のヒト化石が極めて珍しいからだという。アラゴ洞窟ではこれまで、この時代のものとされる歯が数個発見されている。

 アラゴ洞窟で乳歯が発見されたのは今回が初めてであり、この乳歯が当時の「ヒトの行動に関して多くのことを教えてくれる」だろうと、シュバリエ氏は話した。

 研究者らは、トータベルのアラゴ洞窟を人々がどのように生活空間として利用していたかという疑問に長い間取り組んでいる。同遺跡ではこれまでに約150個のヒト化石が発見されている

 アラゴ洞窟は、人類の祖先が狩りの間に休みを取るために立ち寄った一時的な宿泊所なのか、それとも複数の家族がより永続的な住居として利用していたのかについては、まだ明らかになっていない。今回の乳歯は、この謎を解く助けになる可能性がある。(c)AFP