【7月24日 AFP】テニス選手として有名になることを夢見ていたキム・ウニ(Kim Eun-hee)さん(27)は、10歳だった小学生のとき、コーチに初めてレイプされた。その後もレイプは続いた。何度も、何度も。

 韓国のテニスチャンピオンを目指していたキムさんは、当時はあまりにも幼く、それが性行為であることも分からなかった。だが合宿所のコーチの部屋に何度も呼び出されることや、痛みと屈辱的な気持ちを味わわされることが恐ろしくてたまらなかったという。

「あれはレイプだったんだと理解するまでに何年もかかった」と、キムさんはAFPに話した。「コーチには2年間レイプされた…。2人だけの秘密だよと言われて」

 キムさんがあえて実名で国際メディアに初めて自身の体験を打ち明けたのは、韓国で女性アスリートがコーチから性的虐待を受けても泣き寝入りしている実態を明らかにするためだ。

 韓国はスポーツ大国でもあり、日本を除けば、アジアで夏季・冬季五輪を開催した唯一の国でもある。国土面積も広くはなく、人口もそれほど多くはないが、近年の夏冬いずれの五輪大会でも、国別メダル獲得ランキングでは大抵トップ10入りしている。国際的に強い種目は、アーチェリー、テコンドー、スピードスケート・ショートトラック。他方で、女子プロゴルフでも世界を席巻している。

 その一方で、緊密な絆や男性優位のスポーツ指導者層など、いまだに多くの点で家父長制の階層社会でもあり、キャリアを築く上で場合によっては成績と同じくらい人間関係が重視される。

 勝つことが全てとされる極度の競争社会で、多くの若いアスリートたちは学業よりも、親元を離れてチームメートやコーチとフルタイムでトレーニングをすることを優先し、寮生活のような暮らしを何年も続ける。韓国のスポーツ選手が世界と互角に戦えるのも、合宿所システムのおかげだといえる。

 だが、このような環境がさまざまなスポーツで虐待の温床になっていることが明らかになってきた。被害を受けるのは特に、生活全体をトレーナーに管理されている未成年のアスリートたちだ。