■「メダル獲得をひたすら追求…虐待は見て見ぬふり」

 被害を受けた未成年者の保護者の多くは、告発を断念する。その理由について、著名なスポーツコメンテーターのチョン・ヒジュン(Chung Hee-joon)氏は、業界関係者から「選手としての子どもの未来を台無しにしたいのか」と言われるからだと指摘している。こうした関係者をめぐっては、虐待者と交友関係にあるケースも少なくないとされる。

「スポーツ協会は、メダル獲得をひたすら追求し、性的虐待者が優秀な選手を育成していれば、虐待については見て見ぬふりをする」とチョン氏は言う。

 2015年には、ショートトラックの五輪の金メダリストが華城(Hwaseong)のクラブチームでコーチをしていたときにたびたび女子選手らの体を触り、11歳の選手にセクハラを行っていた罪に問われたが、結局、罰金刑しか科されなかった。また、2014年ソチ冬季五輪の女子カーリングチームの監督を務めたチェ・ミンソク(Choi Min-suk)氏は、選手らからセクハラの訴えを受けて辞任したが、その後、別のカーリングチームの監督に就任している。

 虐待は時に、性的なものではなく、肉体的な暴行の場合もある。平昌冬季五輪のショートトラックリレーを含め、五輪で4個のメダルを獲得してきたスピードスケートの有名女子選手、沈錫希(Suk-Hee Shim、シム・ソクヒ)さんは今年、コーチから殴る蹴るの暴行をたびたび受け、1か月間の治療を余儀なくされたと告発している。

 警察の取り調べに対し、チェ・ジェボム(Cho Jae-beom)コーチは、トレーニングキャンプでシムさんら代表選手への暴力行為を認めた。パフォーマンスのレベルアップが目的だったと話したという。