【7月21日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は20日、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)で物議を醸している国歌演奏時の抗議行動に関するリーグの対応を受け、再び騒動をあおる発言を行った。NFLは19日、この問題に関する新たな方針を当分の間施行しないことを発表していた。

 トランプ大統領はツイッター(Twitter)に、「NFLの国歌(演奏時の膝つき)論争が、またしても巻き起こっている。信じ難いことだ! 契約では選手は起立して、胸に手を当てることが義務ではないのか? 4000万ドル(約44億5600万円)も稼いでいるコミッショナーは、立場を明確にするべきだ。膝をついたら1度目は退場、2度目はシーズン出場停止と給与差し止めだ!」と投稿した。

 元サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)のQBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が、2016年に社会的不公正や人種差別に抗議したのがきっかけとなり、選手が国歌演奏時に膝をつき始めた抗議行動は昨年、米国屈指の人気スポーツであるNFLを政治論争の渦に巻き込んだ。

 この問題が大きな騒動に発展したのは、トランプ大統領が抗議行動に参加する選手に対して、国旗、米軍、国家を侮辱する「くそ野郎」だと言い放ったことが始まりだった。この発言によって、昨年9月にリーグでは膝つきの波が広がった上に一部ファンの怒りを買ってしまい、NFLのテレビ視聴率が低下するなど、一部の保守派や同大統領を支持するチームオーナーを苦しい立場に追いやった。

 来季は同様の騒動を避けるために、NFLのロジャー・グッデル(Roger Goodell)コミッショナーは今年5月、各チームのオーナーと合意の上で、全選手、チーム、リーグ関係者はサイドラインで「起立して国旗と国歌に敬意を示す」ことを義務化する方針を発表。その代わりに、選手が望めばロッカールームに留まることも認めていた。

 トランプ大統領のツイートとは裏腹に、NFLの労使協定では選手の起立を義務化する規定はない。選手が新しい規定に違反した場合、リーグはチームに罰金を科す計画となっており、選手への処分についてはチームが決定を下すことになっている。一方、NFL選手会(NFLPA)はこの方針に抗議し、新規定は「労使協定と矛盾しており、選手の権利を侵害するものだ」と主張した。

 この問題の解決を図るため、リーグ側と選手会側は内々に会談を設けていくことで合意しており、19日夜には「据え置き協定」に関する共同声明を発表し、「国歌に関する新規定については、今後数週間のうちに発表もしくは施行されることはない一方で、内々の議論は続けていく」と述べた。(c)AFP