【7月22日 東方新報】1992年6月10日、重慶市(Chongqing)に住む朱暁娟さんの当時1歳だった息子、盼盼(Panpan)ちゃんが家政婦にさらわれた。

 夫婦は息子を探し回り、3年後に河南省(Henan)で誘拐された子どもたちが警察によって救出された際、特徴が盼盼ちゃんと重なる男児がいたということで、河南省高級人民法院で親子鑑定を行った結果、朱さん夫婦と生物学上の親子関係が存在すると判定された。

■「子供を帰したい」

今年1月、朱さんのもとへ、あるメディアから電話がかかってきた。かつて朱さん夫婦の家で家政婦をしていたという女性が、26年前に誘拐してしまった子どもを朱さんに帰したいと言っているという内容だった。

「92年に息子さんをさらわれていますね」。電話の主はそう尋ねたが、朱さんは少し不機嫌になり、「確かに息子をさらわれたことがあるが、20年以上も前に見つかって一緒に暮らしていますけど」と答えた。隣で聞いていた次男は、「詐欺なんじゃないの」と話していた。

 電話の相手はそれでも引き下がらず、朱さんと微信(ウィーチャット、WeChat)のアドレスを交換すると、何枚か写真を送ってきた。写真の中の若い男性は、濃い眉に大きな目、低い鼻に丸顔…今、隣にいる次男にそっくりだった。

 朱さんは直感で、この写真の男性は自分と何らかの関係があると感じた。だが、もしそうだとしたら20年以上も育ててきた「盼盼」(Panpan)は一体、誰なのか。

■二人の「息子」

 元家政婦が帰したいと言っている男性は、「劉金心」という名前だった。四川省(Sichuan)に住んでいた元家政婦は、過去に子どもを二人生んだものの、いずれも亡くなってしまったという。21歳の頃に四川を離れ、重慶に出稼ぎに出て、朱さん夫婦に雇われた。

 元家政婦の住んでいた地域の言い伝えでは、よその家の子どもを連れて帰ることで死んだ子の命を鎮めることができるという。盼盼ちゃんを連れて四川に帰った年に元家政婦は女の子を出産し、盼盼ちゃんの使命は果たされたというわけだ。

 しかし、警察に捕まることを恐れた元家政婦は、盼盼ちゃんを朱さん夫婦のもとへ帰すことができなかった。20年が過ぎ、時効で罪に問われないだろうと思った元家政婦は、やっと子どもを帰す決心がついたのだという。元家政婦は現在、児童誘拐の疑いで地元警察の監視下にある。

 重慶市公安局物証鑑定センターが今年1月、朱さんと劉金心さんの親子鑑定を行った結果、二人には血縁関係があることが証明された。朱さんはまた、「盼盼」として20年以上育ててきた「長男」とも親子鑑定を行ったが、二人には血縁関係が成立しないこともわかった。