【7月15日 東方新報】サッカーW杯の期間中、ブラジルの1試合目は6月18日で、ちょうど中国の端午節に当たる日だった。出前配達ライダーたちは道端で、一緒にちまきを頬張っていた。ちまきの皮をはいでいると、スマホの注文受け警告音が何度も鳴った。

 スマホのアプリを通じた出前配達が広まったのは、ごく近年のことだ。配達員の胡根偉(Hu Genwei)さんによると、2年前なら1日の受注数はせいぜい30件程度だったが、最近は1日80件まで増えたという。

 2013年11月に「美団(Meituan)」がサービス開始、14年10月「餓了麼(Ele.me)」が中国全土の200都市を網羅、15年7月には「百度外売(Baidu Waimai)」融資業務を開始。「餓了麼」の張莹琦(Zhang Yingqi)広報部長は、「今回のサッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)の期間に発注された夜食の出前の注文は4年前と比べて4000%超だ」と言う。

 出前の注文が増えてくると、出前サービスに関わる人間や事象も、サッカーボールと同じように、想像もできないほどの変化が生まれている。

 出前配達員の林さんは、「×」評価で心を痛めている一人だ。男の客は飲料水2ケースをネット上で注文し、林さんが運び始めたさなかに電話をかけてきて、たばこ1箱の追加注文だという。

 林さんは店に引き返して煙草を受け取り、指定場所のマンション4階まで水2箱とたばこを送り届けた。すると客は、ちょうど家にゴミがあるので、ついでに運んでくれないか、と言う。林さんは断ることができないが、次の注文も待ってくれない。遅れてしまえば、また「×」評価とクレームが待ち受けている。こちらを立てればあちらが立たずだ。

 林さんが最も辛いことは、客からののしられることだ。杭州市(Hangzhou)で数日続けて大雨が降ったある日、林さんの配達が遅れてしまった。相手はすでに注文をキャンセルし、金も返却済みだったが、さらに林さんが弁償するよう求めた。30元(約500円)の料理に対し、「50元(約840円)弁償しろ」と客が言う。