【7月13日 AFPBB News】所在なげに立ち尽くしたり、頬づえをついてまどろんだりしているのは、甲冑(かっちゅう)姿の武士たち。中身は勇ましい中世の武者ではなく、どこか現代風で、哀愁も漂う。

「よろいかぶと」をモチーフにアート作品を生み出す野口哲哉(Tetsuya Noguchi)さん(38)の展覧会「〜中世より愛をこめて〜(From Medieval with Love)」が13日、東京・銀座のポーラ・ミュージアム・アネックス(POLA MUSEUM ANNEX)で始まった。

 国内外に多くのファンを持つ野口さんが描く人物像は、たけだけしさではなく静かに感情を表現している。よろいかぶとを身にまとった武者に一見似つかわしくない表情が、見る者を独特の世界に誘い込む。作品が醸し出す、いつの時代も変わらぬ人間臭さに共感の輪が広がっているのかもしれない。

 会場には、額縁も自ら制作したというアクリル絵画のほか、5〜50センチ大の人形など、立体作品を合わせ約50点が展示されている。樹脂製の人形がまとうよろいは、実際の工程と同じように革や布、金属を用いて手縫いで再現されているが、足元には現代的なスニーカーを履かせるなどひねりが効いている。

「侍や武士を制作しているという自覚はあまりない。よろいを着けた現代人、または未来人かもしれない」。中身の、人間部分の表現に腐心したという。ひたむきな表情や、途方に暮れたようなしぐさ、たたずまい。人間の営みの、楽しい部分も悲しい部分も肯定したいという野口さんの意図が感じられる。「人間て、どの時代も悪くないもんだなと」。9月2日まで。(c)AFPBB News