【7月13日 AFP】絶滅したゾウの祖先の頭蓋骨が、仏ピレネー山脈(Pyrenees)の近くにある農場で発見された。頭蓋骨を偶然見つけた農場主は発見から数年間、誰にも言わずに秘密にしていたという。仏トゥールーズ(Toulouse)にあるトゥールーズ自然史博物館(National History Museum of Toulouse)がAFPに明らかにした。

 農場主は2014年、トゥールーズの南西約70キロにあるリスルアンドドン(L'Isle-en-Dodon)村近郊の自身の所有地で作業中に、古代のピレネーに生息していたゾウに似た大型哺乳類マストドン(学名:Gomphotherium pyrenaicum)の頭蓋骨を発見した。この種のマストドンの頭蓋骨が発見されたのは、これが初めて。

 農場に多数の古生物学愛好家らが押し寄せるのを心配した農場主は、自分の発見を秘密にしていた。そして発見から2年後にようやく博物館に連絡を取った。

「今回の発見の重要性を認識したのは、2017年になってようやく発見現場に赴いた時だった」と、博物館の管理者は話した。

 博物館のフランシス・デュラントン(Francis Duranthon)館長は11日にAFPの取材に応じ、このマストドンは「長さ約80センチの牙を4本持つゾウの一種で、上顎に2本、下顎に2本の牙がある」と説明。「完全な頭蓋骨の発見により、この種の生体構造をより明確に把握することが可能になる」と述べた。

 この大型草食動物が数百万年前にピレネーを歩き回っていたことを示す証拠はこれまで、今回と同じ地域で1857年に発見された4本の歯だけだった。

 マストドンの頭蓋骨は一部が岩に覆われた状態で発掘され、研究室に運ばれた。

 博物館のピエール・ダルース(Pierre Dalous)学芸員は「ほぼ想像上の生き物だったこのマストドン種の実態を明らかにしようとしている」と話した上で、「頭蓋骨の残りの部分を露出させるには、岩を少しずつ、1センチ1センチ削り取る必要がある」と説明。専門家らによるこの作業は現在半ばを過ぎたところで、6~9か月以内に完了する見通しだと補足した。(c)AFP