【7月12日 AFP】タイ北部チェンライ(Chiang Rai)県のタムルアン(Tham Luang)洞窟に少年サッカーチームが閉じ込められた事故で、世界の注目を集めた劇的な救出活動の映像が11日、同国海軍により初めて公開された。救助隊員によると、少年らは鎮静剤を投与された状態で担架に乗せられ、曲がりくねった狭い洞窟内の通路を搬送されたという。

 現場では10日、最後に残った少年4人とコーチ(25)が無事洞窟を脱出し、救出活動は終了した。タイ海軍特殊部隊が公開した映像では、外国人とタイ人のダイバーらが滑車やロープ、ゴム製の管を使い、ほとんど動かない少年2人を担架に乗せ搬送している様子が捉えられている。

 空前の救出劇となったとみられる今回の活動について、当局はこれまで詳細の公表を控えていたが、救出活動に参加したタイ海軍特殊部隊元隊員のダイバーが11日、AFPの取材に対して沈黙を破った。

 チャイヤナン・ピーラナロン(Chaiyananta Peeranarong)氏によると、少年らは眠っているか、意識のはっきりしていない状態でダイバーからダイバーへと渡されて洞窟を通り抜けていったという。「眠っている子もいれば、ふらふらして(いるかのように)指を動かしている子もいたが、呼吸はしていた」

 チャイヤナン氏の役割は少年らの搬送で、「少年らは搬送された時には既に担架に乗せられていた」。数キロにわたる脱出経路では、途中に配置された医師らが一定間隔で少年らの容体を確認していたという。

 救出作業は危険と隣り合わせだった。6日には、タイ海軍特殊部隊元隊員のダイバーが洞窟内で酸欠に陥り死亡。最後まで洞窟に残っていたダイバーらが外に向かっていた10日には、排水ポンプが突然故障し、それまで歩いて通ることができた部分の水位が頭の高さまでに上昇した。

 チャイヤナン氏は「あの場所では、排水ポンプを使わなければ、酸素ボンベを使ってしか出ることができない」と説明。このため残された約20人のダイバーらは、水位が上昇する現場から急いで退避し、間一髪で脱出に成功したと語った。(c)AFP/Richard SARGENT, Vijitra Duangdee