■暗い夜の暖かい光

 旅の途中、何度も道に迷った。ある時、崖っぷちに突き当たった。遠くに村の明かりが見えていたが、辺りはもう真っ暗で引き返すこともできず、そのまま石の脇で眠りに就いた。

 夜が明けて目を覚ますと、崖の下に人が待っていて、しきりに身ぶり手ぶりをして道を教えてくれたという。

「その人はトレイル沿いに住んでいて、よく旅人が道に迷っているのを見かけるのだと教えてくれた。前々日の夜、私のテントの明かりを見かけて、水と食べ物を用意して待っていてくれたんだ」

「別れ際に二人で写真を撮った。残念ながら言葉が通じなくて名前は聞いていないけど」。旅の途中で窮地に陥った時、誰かから手を差し伸べられることはとても感動するし、忘れられない出来事となるのだという。

■人生の選択は人それぞれ、道が違えば景色も違う

「ストレスはあったよ。34日間ほとんど誰とも話さず、温かい飯など一口も食べず、紛争も目の当たりにした…。どんなに遠く険しい道のりも恐ろしくはない。一番怖いのは、道を間違えることだ。一歩誤ると、その後もずっと誤った道を歩くことになる。そうなると、命を落とす可能性だってある」

 さまざまな苦難を乗り越えてきた任さんは、一度も後悔をしたことがないという。人生の選択が人それぞれ違うから、違う景色が見えるものだと考えている。

「徒歩旅行は、私の命に対する考え方を変えてくれた。命を尊重することを学んだ。もしも旅先での苦難を経験しなければ、わかることはなかっただろう」(c)CNS/JCM/AFPBB News