【7月13日 CNS】34日間かけて、イスラエル・ナショナル・トレイル(Israel National Trail)1100キロを歩いた。本物の銃や実弾が飛び交う紛争を2度も目の当たりにしたり、野生の狼が出る土地で夜を過ごしたり、草木がまったくない砂漠の中を延々と歩いたり…。いずれも、中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)包頭市(Baotou)の任俊(Ren Jun)さん(55)が旅の途中に経験したことだ。

 インターネット上で「暴走おじさん」の愛称で親しまれる任さんは、趣味で徒歩による探検を続けて20年になる。中国国内の高く険しい山々はもちろんのこと、ネパールやベトナム、モンゴル、ロシア、アフリカなどさまざまな国・地域を旅してきた。

 任さんは、世界でも有名なイスラエルのトレイルを今年4月26日から5月29日にかけて歩いた。地中海特有の40度近い気温の中、砂利道や砂漠を、たった34日間で完歩した。

 当初の計画よりも20日ほど早く完歩したという。出発前に準備していたたくさんの荷物は、旅の途中で捨てるなどして、最終的にはマッチ箱ほどの堅パンと塩、水、靴とテントに「助け合う心」だけが残った。

■死と「崩壊」の淵

「砂漠の空を切り裂くようなごう音をとどろかせ、戦闘機が飛んでいた。爆弾は耳のそばで爆発したように感じた。辺り一面、濃い煙に包まれた…。心臓が震えるようなショックを受けた」と任さん。

「『崩壊』するってどんな感覚かって?それこそ頭がおかしくなりそうだったよ」

 今回のイスラエルの旅で『崩壊』しそうになったのは、28日目だった。イスラエル南部、草木も一切生えていない、少しの日陰すらない砂漠を、42度という気温の中、一滴の水も口にせずに、約30キロの荷物を抱えて毎日10時間以上歩き続けた時だった。

「しっかりした体がなければ、少しも動けなかったと思う」と任さん。毎回、旅に出発する前はわざと太る。今回も出発前に10キロ増やしたが、帰国後は体重はすっかり落ちてしまったという。確かに、出発前の写真の任さんは、ふっくらしたおじさんだったが、旅の終盤の写真では日に焼けて黒くなり、だいぶ痩せている。