【7月10日 AFP】イランで、インターネット上でダンスを奨励したとしてソーシャルメディアのユーザーを糾弾する番組を国営テレビが放映したところ、改革派の国民から批判が殺到する事態になっている。イスラム教国のイランでは、公の場でダンスをすることは禁じられているが、ネットでは「ダンスは犯罪ではない」などと反発する声が相次いでいる。

 番組は国営イラン放送(IRIB)が6日に放映。顔を隠した男女を問いただし、ダンスをしたことを反省させている。そこでは、ダンスはイスラム法と「家族の価値観」に反するものとして描かれている。

 イランのイスラム教保守派に近い日刊紙ハフテ・ソブ(Haft-e Sobh)は、インタビューを受けた男女のうち4人が、日時は明らかでないものの逮捕され、後に釈放されたと伝えている。

 改革派系の新聞エテマド(Etemad)によると、4人の中には、ベールを被らず、おなかのタトゥーが見えるTシャツを着てダンスをする自身の動画を写真共有サイトのインスタグラム(Instagram)に投稿し、人気者となった若い女性もいた。

 マエデ・ホジャブリ(Maedeh Hojabri)さんと特定されている女性は、番組の中で泣き崩れ、「ダンスは犯罪」と認めている。「でも、やましいものをインスタグラムに投稿したことは一度もない」とも訴えている。

 イランは1979年のイラン革命後に導入された法律により、公の場でのダンスを禁止。女性には、ヘッドスカーフと丈の長い衣服の着用を義務付けている。

 しかし、ソーシャルメディア界の「スター」の番組での扱いは、改革派メディアやインターネットユーザーの反発を招いており、特にハフテ・ソブ紙が今回の番組は警察の指示で制作されたと報じてからは抗議が激しくなっている。

 ツイッター(Twitter)にはペルシャ語で「ダンス、私たちは踊る」や英語で「Dancing is not a crime」というハッシュタグが登場。ユーザーたちは自分がダンスをしている動画を投稿している。

 シーア派(Shiite)の聖職者で、大衆紙ハムシャフリー(Hamshahri)で編集者を務めた経歴を持つモハンマド・レザ・ザエリ(Mohammad Reza Zaeri)師は、インスタグラムでこう批判した。「イランのイスラム制度を弱体化させるものは10代の若者がヒップを振ることではない。それは古くさい判事の書き損じだ」 (c)AFP/Marc Jourdier